神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

何だろう。

何だか…嫌な予感がする。

ナジュは天音と一緒に聖魔騎士団に行ったはずだ。それなのに…。

「あのね、遠くに行ったよ」

ベリクリーデが、そう言った。

え?

「もぐもぐ…チョコ美味しい」

いつの間にか、ベリクリーデはさっきシルナがイレースにあげようとした、ラズベリーの板チョコをもぐもぐしていた。

…何で食ってんの?

別に良いけど。シルナは、どうせ山程チョコ持ってるんだし。

それに、今シルナは天音に回復魔法をかけてるから、チョコ食べられてるのに全然気づいてない。

「ベリクリーデ…。お前な…」

ジュリスは眉をひそめたが、しかし。

「ジュリスもどーぞ」

「うぶっ。おま、勝手に口に入れんな」

ジュリスにも、チョコを食べさせてあげていた。

「それより、ベリクリーデ…。さっきお前、遠くに行ったよって…」

「チョコ甘いねー」

「話を聞けって。今言ったのどういう意味なんだ?」

「もぐもぐ。…んー?…分かんない」

…。

「何となく、そんな気がしただけ」

…あ、そう。

「ごめんな…。思わせぶりなこと言って。如何せんこいつ、直感だけで生きてるような奴だから…」

ジュリスが謝ってきた。

いや、ジュリスが悪いんじゃないから。

「いずれにしても、本人から話を聞くしかないでしょう」

イレースが、天音を見つめながら言った。

…そうだな。天音本人に聞いてみれば、何か分かるだろう。

「シルナ…。どうだ?天音は…」

「…ふぅ」

回復魔法をかけ終えたシルナが、杖を下ろした。

「身体の傷は…幸い、そんなに深くなかった…」

「そうなのか?」

随分としんどそうだったから、よっぽど深い傷を負っているのかと思った。

「うん。だけど…身体に毒が回ってる」

「毒…?」

「致死性のものじゃない。身体を麻痺させる為の毒だと思う」

身体を麻痺…。

そうか。それで…傷は深くないけど、身体が動かせなかったんだ。

「それは…もしかして、解毒出来ないのか?」

「いや、大丈夫。そんなに強い毒じゃないから、私の回復魔法で充分解毒出来るよ」

良かった。

それじゃ、無事に回復するんだな。

「ベッドに移動して、しばらくゆっくり休ませ…」

「が…く、いんちょう、せんせい…」

天音だった。

ソファに横たわった天音は目を開き、弱々しい声でシルナを呼んだ。

そしてあろうことか、天音はソファに手をつき、身体を起こそうとしているではないか。

「天音…!無理するな。まだ寝てて良いから…!」

「…だめ…。…じゅ、くん、が…」

「え?」

「だって…。ナジュ、君が…」

…ナジュ。

やっぱり天音は…ナジュのことを知って。

「僕が…僕のせいで、ナジュ君が…」

「ちょっと待て、天音。どういう意味だ…!?」

「ナジュ君が…。『アメノミコト』に…!」

「…」

ぽろぽろと、涙を流しながら。

天音は途切れ途切れの言葉で、何があったのかを教えてくれた。