神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

大通りに、妙な人だかりが出来ているのを見つけたのは。

ベリクリーデと一緒に、オムライスの店に向かっている途中だった。

「…何だ?」

なんか、妙にざわざわしてないか?

「ジュリス。あそこ、人がいっぱいいる」

「…そうだな…。…何だろうな?」

ああいうのは、下手に野次馬しない方が、

しかし。

「うーん…。…行ってみよーっと」

「あ、こら。野次馬はやめろって」

ベリクリーデが、勝手にちょこちょこと走り出してしまったので。

俺は、慌ててその後を追った。

そして、その時。

人だかりの真ん中で、その場に蹲っている人物を見つけた。

「大丈夫ですか?」

「誰か助けを、医者を呼ぶんだ!」

「しっかりしてください!」

多くの人々が、心配そうな、焦ったような声を出して、その人を助けようとしていた。

その人は、俺の知っている人物だった。

「えっ…あ、天音…!?」

イーニシュフェルト魔導学院の保健室の先生である、天音だった。

その天音が、地面にべったりと膝をつき。

苦しそうに、身体を震わせていた。

「ちょ、どいっ…どいてくれ!その人、俺の知り合いなんだ!」

声を張り上げながら、人混みを掻き分け掻き分けて進んだ。

「天音!大丈夫か…!?」

俺は、急いで天音に駆け寄った。

天音は苦しそうに、視線を上げてこちらを見つめた。

「…じ…りす…さ、ん…」

何とか言葉を発しようとしていたが。

天音の声は掠れて、ほとんど言葉になっていなかった。

「一人なのか?一体何があった?」

「な…ゅ、く…が…」

多分、今一生懸命説明してくれようとしてるんだろうけど。

小さく口をパクパクさせているだけで、何言ってるのか全然伝わってこない。

天音の目には、大粒の涙が浮かんでいた。

…一体…何が。

とにかく…手当てして、病院に連れて行かなくては。

「天音、しっかりしろ。すぐに病院に連れてくから」

と、言ったのだが。

天音は、必死に首を横に振った。

やめて、と言わんばかりに。

…え?

「く…いん、に…」

掠れた声で、必死に何かを訴えていた。

「が…い…ん、に…」

ごめん。なんか言ってんだろうとは思うけど、分かんねぇ。

「学院に帰りたいんだと思うよ」

と、ベリクリーデが言った。

「え、そうなのか?」

天音が、こくこくと頷いた。

合ってるらしい。

学院に、って…。イーニシュフェルト魔導学院のことだよな?

でも…。

「怪我…してるのに。まずは病院に行ってから…」

「ね…が…い」

天音は両手を合わせて、拝むようにして頼んできた。

病院じゃなくて、学院に連れ帰ってくれと。

そこまでして…。

「…分かった。行こう」

俺は、天音に肩を貸して立ち上がらせた。

ふらふらしながら、天音は何とか立ち上がった。

「ベリクリーデ、お前も手を…」

貸してくれ、と言おうとしたら。

「…」

ベリクリーデは、まったく明後日の方向を見ていた。

じー、と。

「ベリクリーデ…?」

「…偽物の人…」

「は?」

ベリクリーデの呟いた言葉の意味は、今の俺にはまだ分からなかった。

とにかく、オムライスどころじゃないのは確かだった。