神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

「相変わらず、あなたは良い人ですね」

ナジュ君…。…なんで、笑って。

今、そんなこと関係ないじゃないか。

「良いんですよ、僕のことは気にしないでください」

「…な、に…を」

「僕は不死身ですから。生きてさえいれば、きっといつか、また会える日が来ますよ」

…そうじゃない。

僕が言ってるのは、そういうことじゃないんだよ。

「だったら、あなたの命を守ることの方が優先です。…これは僕なりの罪滅ぼしですよ。かつて、僕があなたにしてしまったことを思えば…このくらい」

やめて。

ナジュ君、今そういうことを言ってるんじゃない。

そう言いたかったのに、痺れて、言葉が出なかった。

「大丈夫ですよ。令月さんとすぐりさんを連れて、いずれ必ず学院に帰りますから」

「…」

やめて。お願いだから。

いずれ、じゃなくて。今、何処にも行かないで。

ナジュ君までいなくなったら、僕は…!

「あなたは本当に優しい。…だから、あなたを守る為に僕は何でもしますよ。…僕達、友達ですしね」

そう言って、ナジュ君はにっこりと微笑み。

「分かりました。あなたに従います」

あろうことかナジュ君は、黒いフードの青年にそう言った。

…!

「だから、天音さんには手出ししないでください」

「…君が大人しくついてくるなら、彼の命は保証するよ」

黒いフードの青年は、僕の身体に突き刺っていたナイフを引き抜いた。

「かふっ…」

僕はそのまま、その場に膝をついた。

痛みも、出血も大したものではなかった。

だけど、身体が動かない。声も出せない。

僕達のただならぬ様子に、周囲がざわざわしているのが分かった。

「…それじゃ、天音さん。…あなたは、無事に学院に戻ってくださいね」

僕に向かって、ナジュ君はそう言って。

それから、くるりと踵を返した。

黒いフードの青年に連れられて。

「…ま…っ、て…」

何とか、必死に呼びかけようとした。

だけど、その声はひび割れているかのように掠れていて、ナジュ君には届かなかった。

待って。行かないで。

心の中で、必死に呼びかけたけど。

僕は引き止めることも、羽交い締めにして止めることも出来ず。

去っていくナジュ君の背中を、ぼんやりとした視界の中で見つめていることしか出来なかった。