神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

すると、ジュリスがこう問いかけてきた。

「お前ら…。つかぬことを聞くが、…天使を見なかったか?」

「え?」

天使?

「天使って…。…あれ?イーニシュフェルト魔導学院に来たっていう、リューイとかいう天使の方?」

「そっちじゃない。…この魔導隊舎でうろうろしてた方だ」

「…あー…。ね…」

クロティルダって天使ね。はいはい。

「事あるごとに、ジュリスが因縁つけてた天使ね…」

「は?」

「いや、何でもない。…そういや、最近見てねぇな…」

いつの間にか、ベリクリーデちゃんの傍に居て。

いつの間にか、自分もレギュラーメンバーです、みたいな顔で、聖魔騎士団魔導対に出入りしてたけど…。

…最近は、姿を見ていない気がする。

「ルイーシュ、お前見た?」

「さぁ。見てないですね」

「だよな…」

…わざわざジュリスが、目の敵にしているはずの、あのイケメン天使の所在を聞いてくるってことは。

「何?どっか行ったの?」

「…あぁ…」

ジュリスの顔が、ぐにゃりと歪んだ。

ひぇっ。

「あいつ…。何も言わず、突然消えやがった…」

怒りがふつふつと込み上げてきたらしい。

怖っ…。

「引っ掻き回すだけ引っ掻き回して…。何処行きやがったんだ」

「べ、別に…天界に帰ったんじゃねぇの?」

天使なんだから。

元々、あんな頻繁に地上に降りてくる方がおかしいんだよ。

しかし。

「だったら、ちゃんとそう言ってから消えろよ。突然、何も言わずに消えるもんだから…」

「…」

「この通り、ベリクリーデが落ち込んでる。本当何考えてんだ、あのクソ天使。今度会ったらぶん殴ってやる」

と言って、無意識に拳を固めるジュリス。

ちょ、意気込むのは良いけど、勢い余って俺まで殴らないでくれよ。

ジュリスのヤツ…天使のこと、あんなに嫌ってた癖に…。

その天使がようやくいなくなって、両手を上げて喜ぶどころか。

落ち込むベリクリーデちゃんを見たら、すぐこれだ。

ったく…。

「呼んでも来ないんです?」

「あぁ…。ベリクリーデが何度呼んでも来ない」

「そうですか…」

聞こえてないのか、それとも聞こえてても返事が出来ないのか…。

「何か、トラブルに巻き込まれてなければ良いけど…」

この時点で俺にとっては、アーリヤット皇国とキルディリア魔王国の戦争よりも。

目の前で、静かに天使に対して怒りを燃やすジュリスのとばっちりの方が、余程怖かった。






…なんて言っていられたのも、この時までだった。