神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

学院長室に戻り。

俺とナジュは、先程ツキナから聞き出した情報を、みんなに共有した。

「…案の定、というところですね」

イレースも予想していたのだろう、彼女は驚くことなく、代わりに溜め息をついた。

それに、天音も。

「そっか…。また『アメノミコト』が…。もう諦めてくれれば良いのに」

まったくだよ。

奴らのしつこさと来たら。こびりついて落ちない油汚れかな?

「そんな…。ツキナちゃんを守る為とはいえ…。二人だけで『アメノミコト』に…」

呆然とするシルナ。

「それから…私のチョコ、ツキナちゃんのクラスのみんなで食べてくれてたんだね。良かった…!」

…そのことは良いから。

自分の口には入らなかったチョコだが、生徒達が美味しく食べてくれていたと聞いて、その点については満足そうなシルナだった。

「よし、今すぐ追いかけよう。ジャマ王国に、令月君達を助けに!」

「ちょ、ちょっと待って。まだジャマ王国に行ったと決まった訳じゃ…」

「…いいや、二人がジャマ王国に向かったのは間違いないと思うよ」

窓際から声が聞こえて、振り向くと。

そこに、いろり形態のマシュリがいた。

「マシュリ…!戻ったのか」

「うん」

いろりマシュリは、その場でくるりと一回転。

人間の、マシュリの姿に『変化』し直した。

おかえり。

「二人の匂いを辿っていったんだ。かなり綺麗に匂いを消してたから、苦労したよ」

「そうか…」

「それに、昨日は猫集会の日だったから、多くの猫仲間が集会に出てて、令月達の目撃情報もほとんどないし…」

「…そうか…」

いつも思うんだけど、その猫の集会、いつも何やってんの?

要る?それ。要るのか?

「では、収穫は無しですか」

「ううん。僕らのニャットワークは伊達じゃないよ」

ニャットワークって何?

「集会を休んでた何匹かの猫に、話を聞いた。昨夜、二人を見かけた猫がいるらしい」

「マジか…!」

近所の猫、ナイス。

よくやってくれた。今度猫缶持っていくよ。

「彼らが向かったとされる方向に、二人の匂いが僅かに残ってた」

「それって…それって何処なんだ?」

「途中で匂いが途切れてたから、はっきりとは分からないけど…。…森の中に向かったのは間違いないと思う」

森…って。

「まさか…ジャマ王国との国境沿いの?」

「うん。そこで間違いない」

…じゃあ、これでもう確定だな。

「…やっぱりあいつら、『アメノミコト』に呼び出されて…ジャマ王国に向かったんだ」

「…うん、そうみたいだね」

「…畜生」

俺達は教師だぞ。

教師として、生徒を守り、保護するのは当然のことじゃないか。

それなのに…生徒である彼らを、まだ子供である彼らを…。

みすみす、暗殺組織の手に戻してしまった。

悔しくて、歯がゆくて堪らなかった。