神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

それに、もし…『アメノミコト』の人間が、令月とすぐりに接触したら。

その時点で、両者間の戦闘が勃発しただろう。

だから敢えて、令月とすぐりの共通の知人…まったく無関係のツキナに、呼び出し状を渡し。

正体を隠して、令月達のもとに呼び出し状を届けさせた。

「それだけじゃありませんよ。これは…警告でもあるんでしょう」

俺の心を読んだナジュが、すかさずそう言った。

「警告?」

「『アメノミコト』は、令月さんとすぐりさんがツキナさんの友人であることを突き止め、敢えてツキナさんに手紙を渡したんです。…これがどういう意味か分かりません?」

「…それは…。…!」

「…気づいたようですね」

あぁ、気づいた。

出来れば、気づきたくなかったよ。

敢えてツキナに、手紙を渡させることで。

「ツキナがお前らの友人であることは知ってるんだぞ」と。

ひいては。

「ツキナの命を奪おうと思えば、いつでも出来るんだぞ」という警告でもある。

元暗殺者である令月達は、当然敏感にそのことを察したはずだ。

「恐らくその手紙、逆らえばツキナさんの命を保証しない、とでも書いてたんじゃないですか?」

「…その可能性は高いな」

もし、呼び出しに応じなければ…危ないのはツキナだ。

ツキナを巻き込む訳にはいかない。

だから、素直に呼び出しに応じた。俺達に相談することもなく。

もしかしたら、俺達に相談すれば、その時もツキナの安全は保証しない、と脅されていたんじゃないのか。

そう思えば…二人が何も言わず、勝手に学院を抜け出した理由も頷ける。

「…あの、馬鹿共…」

ツキナの命を守る為とはいえ。

その為に、自分達の命を投げ打ったんじゃ、意味ないじゃないか。

ツキナは、お前達が戻ってくるのを待ってるんだぞ。

もし帰ってこなかったら、結局、ツキナを死ぬほど悲しませることになるんだぞ。

それが分からないのか。…分からないはずがないだろ。お前達なら。

「…それでも」

と、ナジュは言った。

「それでも、彼らはツキナさんを守ることを優先したんですよ」

「…」

…そうか。

その気持ちが…分からないことはない。

むしろ、よく分かる。

分かるからこそ、もどかしいのだ。

「まぁ、普段から彼らの心の中を見るに…どうも、命を軽んじてる節がありますからね」

「お前ほどじゃないけどな」

「僕は良いんですよ。残機無限なんだから」

良くねーよ。お前も自分の命を大事にしろ。

「自分達の薄汚い命で、誰かを守れるならそれは本望…と、思ってるんでしょう。きっと」

「ふざけやがって…」

誰が薄汚い命だって?何が本望だって?

絶対、そんなこと認めてなるものか。

「『アメノミコト』に乗り込んででも、令月とすぐりを連れ戻してやる」

「…あなたも結構、命知らずなこと考えますよね」

それは褒め言葉だと受け取って良いんだよな?ナジュ。