神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

すると、ツキナが首を傾げた。

「ナジュ先生。今日、すぐり君は何処に行ったんですか?」

…どうやら、ツキナも疑問に思ってるようだな。

それ、俺が聞きたいんだわ。

実はすぐりと令月は今、行方が分からないんだ。

だから、ツキナが何か知ってるんじゃないかと思って聞きに来たんだが…。

でも、それを正直に言ったら、きっとツキナを心配させてしまう。

そこで。

「彼はちょっと…今、令月さんと一緒に自分探しの旅に出てるそうです」

ナジュは真面目な顔をして、そう答えた。

…普通ならそんな返事じゃ納得出来ずに、何じゃそりゃ、と言っていただろう。

しかし、ツキナはそんな細かいことは気にしない、大雑把な、いや、おおらかな性格なので。

「そうだったんですかー!」

…納得するのかよ。

ま、まぁ良いや。心配かけてないなら。

「それよりツキナさん、昨日令月さんとすぐりさんに会いました?」

「え?会いましたよ?」

「何処で?」

「畑です!」

園芸部の畑のことだよな?

冬休みの間中、二人は甲斐甲斐しく畑の世話に勤しんでいた。それは知っている。

冬だから、畑仕事なんてやることないだろうと思ってたが。

そうでもないらしくて、ツキナに託された畑を一生懸命守っていた。

「ただいまーって言って、それからお土産に買ってきたお饅頭、一緒に食べたんですよ!」

「へぇー。それは楽しそうですね。僕も是非ご一緒させて欲しかったです」

心配をかけないよう、不安を悟らせないよう。

ナジュが慎重にツキナの心を読みながら、言葉を選んでいるのが伝わってきた。

「久し振りに会えて、令月さんとすぐりさんも喜んでたでしょう?」

「はい!」

「何か変わった様子、ありませんでした?」

「あ、そうだ。お手紙を渡したんです」

…手紙?

「何なんだ?手紙って…」

「セレーナの駅で、二人の小学校の時の恩師だっていう人からお手紙を預かったんです」

ツキナから告げられたその言葉に、俺は心底驚いた。

令月とすぐりの…小学校の時の、恩師?

誰のことだよ?

「誰なんだ?それ…」

「さぁ…?女の人でしたけど」

マジで誰だ?全然思い当たる節が…。

…まさか。

令月とすぐりの失踪は、その手紙とやらが原因なのか?

「なんて…なんて書いてあったんだ?その手紙…」

「…分かりません…」

「…」

そりゃそうだ。人様の手紙を盗み見るはずがない。

だけど…。

…やっぱり、その手紙っていうのが怪しそうだな。

「成程、そうだったんですね。教えてくれてありがとうございます」

「いいえ!すぐり君と令月君が冬休みの間、畑を守ってくれたから。二人が戻ってくるまで、今度は私が畑を守ります!」

「さすが園芸部の部長。頼もしいですねー」

「えへん!」

胸を張ってドヤ顔のツキナ。

…どうやら今のところ、二人の失踪を心配している様子はなさそうだ。

本当に武者修行だと思ってそう。

でも、だからこそ…心配をかけてしまう前に、あの二人に戻ってきてもらわなければ。

何事もなかったようにな。