神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

その後、すぐに。

俺達は、学院の教師達を学院長室に呼んだ。

それから、事態を聞きつけたマシュリが、窓からひょいっ、と入ってきた。

「…」

「…ふむ、成程…」

「…そんな…」

イレースとナジュ、そして天音の三人にも、置き手紙を見せると。

イレースは不機嫌そうに眉をひそめ。

ナジュは何やら納得したような顔。

天音は俺やシルナと同じように、真っ青になっていた。

で、マシュリは。

「…ふんふん…。…確かに、二人の匂いがする」

置き手紙の匂いを嗅いで、確かに令月とすぐりが書いたものであることを確認してくれた。

「…で、二人は今行方不明な訳ですね?」

「…あぁ…」

急いで、学生寮にも向かったのだけど。

令月の部屋にもすぐりの部屋にも、二人の姿はなかった。

二人のルームメイトに話を聞いたところ、今朝から姿を見なかった、と。

「また脱走か…。…あいつら…!」

あの二人が学院を脱走するのは、今日が初めてではない。

だが、この置き手紙…。

…何だか、凄く嫌な予感がする。

「そういえば昨日、令月さんとすぐりさんに一度も会いませんでしたね」

と、ナジュが言った。

「思えば、意識的に僕を避けていたんでしょう。…会えば、脱走しようとしていることを見抜かれると思って」

「…ってことは、昨日の時点で脱走を計画してた、ってこと…?」

「恐らくは」

…。

「でも、それまで何も言ってなかったよね?様子も…特におかしなことはなかったのに」

「仮に何か有ったとしても、二人共ポーカーフェイスが上手いですから、見破るのは難しかったかもしれませんが」

天音とナジュが言った。

…だよな。

心が読めるナジュならともかく、俺とシルナじゃとても、あの二人が何を考えているのか見抜くことは出来ない。

「…とにかく、令月君達を探さなきゃ」

と、シルナ。

そうだな。

どんな事情があれど、俺達がやるべきことは一つだ。

「僕達のことは忘れてください」だと?

…アホぬかせ。

忘れようと思ったって、忘れられる訳がないだろ。

「絶対に探し出すぞ」

この言葉は、俺が自分に言い聞かせる為であると共に。

仲間達に、共通の意志を確認する為でもあった。

すると。

「当たり前です。私の授業をサボろうなどと、断じて許せません」

「令月さんやすぐりさんは、大事な仲間なんだから。絶対に連れ戻さなきゃ」

「勿論です。彼らには生きていてもらわなくては」

イレースと天音、そしてナジュがそう言った。

…良かった。

仲間達もまた、俺と同じ気持ちだった。

「…君達は、勝手にいなくなろうとしても、何処までも追いかけてきて助け出そうとするからね」

マシュリが言った。

かつてマシュリが死んだ…と、思われた時も。

俺達は、冥界に赴いてでもマシュリを助けに行った。

当たり前だろ。

仲間なんだから。何処にでも助けに行く。

「僕も、出来ることは何でもするよ」

「ありがとう…マシュリ」

助かるよ。

「知り合いの猫達に、協力を仰いでみる」

「あぁ…頼む」

マシュリは猫の姿に『変化』し、早速窓の外に飛び出した。

あと、俺達に出来ることは…。

「聖魔騎士団の…エリュティアに頼んで、探索魔法を使って探してもらおう」

人探しなら、真っ先にエリュティアを頼るべきだ。

令月もすぐりも、エリュティアの探索魔法で辿れる『痕跡』を、多く残してはいはいだろう。

でも、令月もすぐりも、人間だ。

魔物であるマシュリと違って、人間であれば、完全に『痕跡』を消すことは不可能。

時間はかかるだろうが、きっと見つけてくれるはずだ。

すぐにでも動こう。

「今すぐ、聖魔騎士団に…」

「それも良いですが、それよりも、まずはもっと事情を知ってそうな人に話を聞くべきでは?」

ナジュが、そう提案した。