神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

シルナはチョコの箱をほっぽりだして。

「あびゃびゃびゃびゃ!」

奇怪な悲鳴を上げながら、俺にしがみついてきた。

ちょ、何で俺にひっつくんだよ。

「おばけ、おばけーっ!!」

「離れろって、おばけではないだろ!」

ピエロだよ、ピエロ。

いや、ある意味では、ピエロの方が幽霊よりも不気味かもしれないけど。

ちょっと落ち着け。何事だこれは。

シルナがチョコの箱を開けると、何故かピエロの顔が飛び出してきた。

まるで、誰かがびっくり箱でも仕掛けたかのように…。

「襲われる!ピエロに襲われるんだ!うわぁぁぁん!」

ピエロのびっくり箱にガチ泣きする男、シルナ。

どうでも良いけど、俺にくっついて泣くのやめろよ。鼻水つくじゃん。

「な…何なんだ?これ…」

俺は、シルナを身体にくっつけたまま、チョコレートの箱ににじり寄った。

シルナが放り出した箱を、そーっと確認してみると。

びよーんびよーん、とピエロが頭を振っていた。

ご丁寧に、きちんと紙を折り畳んで箱に詰め、入念にびっくり箱を作ったらしい。

紙で作ったとは思えないくらい、立体的。

凄く丁寧な仕事だな…。嫌がらせに手は抜かないタイプ?

「…シルナ、これ紙だよ」

「ピエロが〜っ!ピエロが〜っ!!」

「作り物だって…」

本物じゃないから。ただのびっくり箱だから。

俺は、チョコの箱を拾ってみた。

中を覗くと、紙で作ったピエロの仕掛け以外には、何も入っていなかった。

「大丈夫だ、シルナ」

「ピエロに食べられちゃうよ〜っ!!」

「…大丈夫だって…」

駄目だ。本気でビビっちゃってる。

こんなちっちゃい紙のピエロが、人を喰う訳ないだろ。

「…やれやれ」

誰が仕掛けたのか知らないが。

シルナが落ち着くまで、しばし待つとしよう。