神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

すると、シルナは神妙な顔をして語り始めた。

「この間、生徒に言われたんだよ」

「なんて?」

「…イレースちゃんの小テストが難し過ぎる、って」

…あ、そう。

「小テストって…イレースが毎週行ってるっていう、アレ?」

「そう、アレだよ」

イレースは、学期に2回行われる定期試験の他に。

毎週、授業で狭い範囲の小テストを行っている。

イレース曰く、定期試験の時は、ほとんどの生徒が言われなくても勉強をする。

しかし、イーニシュフェルト魔導学院の生徒たる者、定期試験の時だけではなく、普段から真面目に、みっちりと勉強する必要がある。

そこで、生徒の気を引き締める為に、毎週小テストを実施する。

…とのこと。

しかも、この小テスト以外にも、イレースはしょっちゅう、授業の合間に抜き打ちテストを実施している。

毎回、イレースの授業が始まる度に「今日は抜き打ちテストかも…?」とびくびくしているであろう生徒を思うと、可哀想で仕方がない。

ちなみに、イレースが行う、この小テスト。

もし赤点だった場合、放課後に強制補習授業の刑に処される。

その為、生徒達は自らの放課後の平穏を守ろうと、必死に勉強させられる羽目になっているのである。

…やっぱり可哀想。

そりゃ、俺だってたまには小テスト、やるよ?…やるけど。

でも、イレースほど頻繁にはやらないし、小テストを行う時はちゃんと、2、3週間前に生徒に通知を出すよ。

イレースには、そういう慈悲はないらしい。

生徒達の中では、「イレース先生の小テスト」という言葉は、地震雷火事親父、に並んで恐ろしいものと例えられている。

「本当に可哀想なんだよ。生徒がこの間、例の小テストを見せてくれてね…」

「はぁ…」

「ほら…これだよ」

シルナが、生徒にもらった小テストの問題用紙を見せてくれた。

ざっと目を通したところ。

…おぉ。

相変わらず…重箱の隅をつつくような問題ばかり。

しかも、選択問題や穴埋め問題はゼロ。

全部記述式か、論述式の問題ばかり。

当然、この程度は分かってるよな?と言わんばかり。

それに、これ本当に小テストか?と思うくらい、問題数が多い。

これ、そのまま期末試験に使えるんじゃないか。

小テストでさえこれなんだぞ。中間試験や期末試験の問題は、どれほど難しいことだろう。

…これはキツい。

イレース相手に情けを期待するのが大きな間違いであることは、これまでの経験から重々承知している。

が、俺達相手ならともかく、生徒達にはもう少し…手加減してやってくれよ。

「酷いでしょ?こんな問題…酷いでしょっ!?」

なんでシルナが半泣きなんだ?

恐らく、こんな鬼畜テストを受けさせられる生徒に、深く同情しているものと思われる。

「可哀想に…!こんな酷いテストを毎週受けさせられるなんて!羽久もそう思うでしょ!?」

「そ、そうだな…」

「これじゃあ、放課後に学院長室におやつを食べに来る時間もなくなるよ!」

「…」

それは別になくて良いんじゃね?って思ったが。

そんなこと言おうものなら、「おやつは何より大事だよ!」とか言って唾を飛ばしながら論駁するに違いないので。

黙っておくよ。

「だから私…学院長として、イレースちゃんに苦情を入れたんだ!」

「お、おぉ?」

マジで?やるじゃん。

ちょっと見直したよ。