ーーーー…ほぼ同時刻。

僕は『八千歳』の共に、指定された国境沿いの森の中に入っていった。

あと少しでその場所に到着する、というガサッ、という葉の揺れる音が聞こえたかと思うと。

「…!?」

隣を歩いていた『八千歳』が、忽然と姿を消した。

僕はすぐさま、周囲を見渡した。

葉の揺れる音以外、物音も足音も聞こえない。

それどころか、人の気配さえなかった。

この状況で、『八千歳』が僕に何も言わず、勝手に消えることは有り得ない。

つまり、不測の何かが起きたのだ。

恐らく、敵襲だろう。

僕はすぐさま、両手に小太刀を構えた。

とりあえず、『八千歳』は返してもらおう。

…すると。




「…ここにいたか。裏切り者」



木の上から、女の声がした。

すぐさま、その方向に視線を向けると。

闇夜に紛れて、僕や『八千歳』と同じ黒装束を身に着けた女が、無表情にこちらを見下ろしていた。

…そっちは木の上で、僕は地面。

高いところから見下ろされるっていうのは、あまり良い気分じゃないね。