鬼頭夜陰。
悪名高き、『アメノミコト』の頭領である。
幼い俺や『八千代』、そして目の前にいる『乙夜』もそう。
子供を暗殺者に作り上げ、道具として扱う。
その冷酷さは、俺が一番よく知っている。
今でこそ、あの男は救いようのない酷い人間だ、ってことが分かっている。
だけど昔の俺は、分かってなかった。
それどころか、俺は…あの人に認められることを切望していた。
あの人に認められて、必要とされて…そして、『八千代』より優れていることを証明したかった。
あんな男に認められることに、何の意味があるのか。
『八千代』と自分と、どちらが優れているのかなんて、今やどうでも良い。
『八千代』に『八千代』の良さがあるように、俺には俺の良さがある。
それは比べられるものじゃないし、天秤にかけて、どちらがより重いか、軽いかで価値のあるなしが決まる訳じゃない。
ってことを、今の俺は知っている。
だけど…『アメノミコト』にいた時は、そのことを知らなかった。
俺は『八千代』を越えたかった。『八千代』よりも強く、価値のある人間になりたかった。
対抗心や劣等感を植え付けられ、あの男に、良いように利用されていたのだ。
馬鹿馬鹿しい。
あの男にとっては、俺は当然、『八千代』だって、価値のある人間じゃなかった。
誰でも良かったのだ。便利な駒なら。…誰でも。
そんな簡単なことにさえ気づかず、鬼頭夜陰の思うまま、利用されていた過去の自分に腹が立つ。
「君等の価値観は、一昔前で止まってるみたいだね」
いつまでも昔のままじゃあ、まるで進歩がないよ。
価値観をアップデートさせなきゃ。…俺みたいにね。
どちらがより優れているか否かなんて、そんなつまんないことを抜きにすれば。
『八千代』は、ふつーに良いヤツだと思うよ。
ちょっと間抜けなのが玉に瑕だけどね。
「今の俺は、『八千代』に死なれちゃ困るんだよ」
少なくとも、俺よりは長く生きてもらわなきゃ。
「だから返してって言ってんの」
「それは出来ない」
あっそう。
「鬼頭様は、お前達裏切り者を許さない。『アメノミコト』を離反し、あまつさえターゲットだった男のもとで、のうのうと暮らしているなど…」
「君も一緒にどう?あの学院長せんせーなら、喜んで受け入れてくれると思うけど」
うちの学院長せんせーと来たら、人を疑うってことをしないからさー。
敵だった人でも、喜んで自分の懐の中に迎え入れて。
その警戒心のなさ、ちょっと改めた方が良いんじゃないかなー、と俺は思うけど。
それをせず、相手が敵でも仇でも、悪意なく一緒にチョコケーキを食べる。
それが、あの学院長せんせーの人望の高さの秘訣なんだろーね。
…でも。
「…忌々しい。裏切り者のお前と一緒にするな」
俺の誘いは、むしろ『乙夜』を怒らせてしまったようだ。
「私はお前と違って、『アメノミコト』の…そして、『終日組』としての誇りを忘れてはいない」
『終日組』としての誇り、だってさ。
笑わせてくれるよね。
埃の間違いじゃないの?
「暗殺者の誇りなんて、吹けば飛ぶようなものを後生大事に守って何の意味があるの?」
「誇りを失ったお前には分かるまい」
「はいはい」
分かりたくもないってね。
まぁでも、理解出来なくはないよ。
自分だって…少し前まで、同じ立場だったんだから。
その、吹けば飛ぶような誇りを…大事に守らなきゃ、生きるか死ぬかの過酷や日々を生きていくことは出来なかった。
そして、俺達暗殺者に、その過酷な日々を強いた張本人が…。
鬼頭夜陰、その人なのだ。
「…それで?伝言って何?今更あの人が、俺に何の用?」
『八千代』は勿論返してもらうけど。
その前に、一応伝言くらいは聞いてあげるよ。
悪名高き、『アメノミコト』の頭領である。
幼い俺や『八千代』、そして目の前にいる『乙夜』もそう。
子供を暗殺者に作り上げ、道具として扱う。
その冷酷さは、俺が一番よく知っている。
今でこそ、あの男は救いようのない酷い人間だ、ってことが分かっている。
だけど昔の俺は、分かってなかった。
それどころか、俺は…あの人に認められることを切望していた。
あの人に認められて、必要とされて…そして、『八千代』より優れていることを証明したかった。
あんな男に認められることに、何の意味があるのか。
『八千代』と自分と、どちらが優れているのかなんて、今やどうでも良い。
『八千代』に『八千代』の良さがあるように、俺には俺の良さがある。
それは比べられるものじゃないし、天秤にかけて、どちらがより重いか、軽いかで価値のあるなしが決まる訳じゃない。
ってことを、今の俺は知っている。
だけど…『アメノミコト』にいた時は、そのことを知らなかった。
俺は『八千代』を越えたかった。『八千代』よりも強く、価値のある人間になりたかった。
対抗心や劣等感を植え付けられ、あの男に、良いように利用されていたのだ。
馬鹿馬鹿しい。
あの男にとっては、俺は当然、『八千代』だって、価値のある人間じゃなかった。
誰でも良かったのだ。便利な駒なら。…誰でも。
そんな簡単なことにさえ気づかず、鬼頭夜陰の思うまま、利用されていた過去の自分に腹が立つ。
「君等の価値観は、一昔前で止まってるみたいだね」
いつまでも昔のままじゃあ、まるで進歩がないよ。
価値観をアップデートさせなきゃ。…俺みたいにね。
どちらがより優れているか否かなんて、そんなつまんないことを抜きにすれば。
『八千代』は、ふつーに良いヤツだと思うよ。
ちょっと間抜けなのが玉に瑕だけどね。
「今の俺は、『八千代』に死なれちゃ困るんだよ」
少なくとも、俺よりは長く生きてもらわなきゃ。
「だから返してって言ってんの」
「それは出来ない」
あっそう。
「鬼頭様は、お前達裏切り者を許さない。『アメノミコト』を離反し、あまつさえターゲットだった男のもとで、のうのうと暮らしているなど…」
「君も一緒にどう?あの学院長せんせーなら、喜んで受け入れてくれると思うけど」
うちの学院長せんせーと来たら、人を疑うってことをしないからさー。
敵だった人でも、喜んで自分の懐の中に迎え入れて。
その警戒心のなさ、ちょっと改めた方が良いんじゃないかなー、と俺は思うけど。
それをせず、相手が敵でも仇でも、悪意なく一緒にチョコケーキを食べる。
それが、あの学院長せんせーの人望の高さの秘訣なんだろーね。
…でも。
「…忌々しい。裏切り者のお前と一緒にするな」
俺の誘いは、むしろ『乙夜』を怒らせてしまったようだ。
「私はお前と違って、『アメノミコト』の…そして、『終日組』としての誇りを忘れてはいない」
『終日組』としての誇り、だってさ。
笑わせてくれるよね。
埃の間違いじゃないの?
「暗殺者の誇りなんて、吹けば飛ぶようなものを後生大事に守って何の意味があるの?」
「誇りを失ったお前には分かるまい」
「はいはい」
分かりたくもないってね。
まぁでも、理解出来なくはないよ。
自分だって…少し前まで、同じ立場だったんだから。
その、吹けば飛ぶような誇りを…大事に守らなきゃ、生きるか死ぬかの過酷や日々を生きていくことは出来なかった。
そして、俺達暗殺者に、その過酷な日々を強いた張本人が…。
鬼頭夜陰、その人なのだ。
「…それで?伝言って何?今更あの人が、俺に何の用?」
『八千代』は勿論返してもらうけど。
その前に、一応伝言くらいは聞いてあげるよ。


