神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

しばらくして、ナジュは大きなお盆を持って戻ってきた。

「出来ましたよー」

保健室の中に広がる、食欲をそそられる素敵な料理の匂い。

醤油や、みりんや、出汁の匂い…。これぞ和食、って感じ。

一体何を持ってきたのかと思ったら。

ナジュは、手作りの大根料理の数々をお盆に乗せて持ってきたのである。

「うわぁ、良い匂い…!」

天音もびっくり。

「そうでしょう?折角なので、腕を振るってみました」

手作りらしい味噌だれをたっぷりとかけた、ほくほくのふろふき大根。

それに、ほのかにバターの香りがする、焦げ目のついた大根ステーキ。

脂の乗ったブリと一緒に煮て、生姜を効かせた美味しそうなブリ大根。などなど。

その他にも、鶏肉と大根の煮物、大根サラダ、大根の味噌汁、大根の浅漬けなど、多種多様な大根料理が並んでいる。

「これ…お前、一人で作ったのか?」

「ふふふ。僕の料理の腕前は、リリスに『何処に嫁がせても恥ずかしくない!』って言われたくらいなので」

確かに。

これだけの料理を、この短時間で作ってしまうなんて。

お前は、何処に嫁に出しても恥ずかしくないよ。

…お前は嫁じゃなくて、婿だが。

「さぁさぁ皆さん、たくさんあるので、遠慮なく食べてください」

マジ?これ食べても良いのか?俺。

なんか申し訳ないな。

と思いつつも、さすがに目の前にこんな美味しそうな大根料理を出されると、誘惑に抗えない。

めっちゃ美味しそうなんだもん。

早速、ナジュ特製のふろふき大根をひとくち、いただいた。

しっとりとした大根に、出汁の味が染み込んでいる。

これぞおふくろの味。

…いや、俺おふくろいないから分からないけど。

「相変わらず、料理上手いね。ナジュ君は」

天音も、嬉しそうに大根料理を食べていた。

そして、イレースも。

「数少ない特技の一つですね」

…素直に「美味しい」って言ってやれば良いのに。

天の邪鬼だなぁ。

そして。

「もぐもぐ…。…うん、瑞々しくて美味しい」

「そりゃあ、俺達の畑で作った大根だからねー。美味しく調理してくれて、作った甲斐があったってもんだよ」

…何故か、いつの間にか令月とすぐりが保健室の中にいて。

一緒に大根料理に舌鼓を打っていた。

…いつからいたんだ。お前ら。

さては、匂いを嗅ぎつけてやって来たな。

更に、匂いを嗅ぎつけて来たのは二人だけではない。

「鰹出汁の良い匂いがする…!」

どうやら、料理に鰹節を使っていたらしく。

その匂いに釣られて、マシュリまでやって来た。

「そう来ると思ってましたよ。これ、料理に使った鰹節の残りなんですが…」

ナジュが、マシュリに袋半分ほど残った鰹節を出すと。

「…!にゃー」

マシュリは途端に猫の目になって、鰹節に飛びついた。

…お前って奴は。

大喜びでペロペロと鰹節を舐めてるから、本人は満足なんだろうけど。

マシュリが嬉しそうだから、まぁいっか…。

それに、シルナも。

「美味しいね〜。ほっこりするね」

満足そうな顔で、大根料理を食べていた。

…の、だが。

「…ん?何か忘れてるような」

「は?」

「…そうだ!私のチョコケーキ!」

…あぁ。

そういや…。3層のザッハトルテ、持ってきたんだっけ。

「…まぁ良いんじゃね?ケーキはまた今度で」

「えぇぇーっ!?私のチョコケーキーっ!」

今日のところは、ナジュの手料理の方が勝ちってことで。