ーーーーー…一方その頃、校舎の中にいた俺とシルナは。





仲間を守りたいという一心で、シルナはイシュメル女王に従うことを決めた。

こんな酷い…残酷なことがあるか。

「そう、それで良いのじゃ。おぬしなら、正しい選択が出来ると信じておったぞ」

満足げに微笑むイシュメル女王。

何が…正しい選択だ。

こんなもの…シルナの望むことじゃないのに。

「さぁ、こちらへ来い。今からおぬしは、我がキルディリア魔王国の、」

「そこまでだ」

…えっ!?

俺もシルナも、イシュメル女王も…驚きのあまり、目を見開いた。

突然俺達の間に挟まれるように、背の高い、翼の生えた青年が現れた。

その手には、銀色の蛇腹剣を持っていた。

だ…誰?

「…!おぬし…!まさか…」

イシュメル女王、この男を知ってるのか?

この大きな翼…まるで、リューイと同じような…。

その彼は、イシュメル女王をじろりと睨んだ。

「…ケルディーサにそそのかされて、色々と企んでいたようだな」

「…やはり、おぬしがクロティルダか…」

く、クロティルダ?

これがその人の名前?

で、ケルディーサってのは何だ?

「だが、その企みに聖賢者達や…我が姫を巻き込むことは許容出来ない」

「…」

「即刻、この国から手を引け。…さもなくば」

「…さもなくば、なんじゃ?」

「ただでは済まさない」

彼は本気だった。

その声色で分かる。

そして、イシュメル女王が焦っていることも分かった。

初めてだ。イシュメル女王が狼狽えているところを見るのは。

つまり今の状況は、この人にとって想定外なのだ。

誰なのか分からないけど、イシュメル女王を脅し、この国から出て行けと言っている。

ってことは、この人は俺達の味方なのだ。

…多分。

「どうする?ここで俺と戦うか?」

「…」

イシュメル女王は、ぱちんと扇をたたみ。

そして、憎しみのこもった目で、青年を睨みつけ。

「…覚えておれ、貴様。わらわを敵に回したこと、いずれ後悔させてやる」

「好きにしろ」

次の瞬間。

イシュメル女王は、パッと姿を消した。