神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

彼の力は圧倒的だった。

たった一撃で、キルディリア魔王国軍の魔導師達はほぼ全員、地面に突っ伏していた。

死んではいない。威力は、意識を奪う程度。

あくまで、無力化するのが目的だったようだ。

す…凄い。

何なんだ…この人。

「…これで全員助けたか」

僕はあまりに驚いて、何も言えなかったが。

「校舎の中に、学院長と羽久さんがいるはずです」

僕とは違って、ナジュ君は非常に冷静で。

「二人を助けてくれませんか」

その人が敵なのか味方なのかも分からないのに、学院長先生と羽久さんのことを頼んだ。

「心得た」

彼は頷き、すぐに校舎の中に消えていった。

「た…頼んで良かったの?あの人に…」

「助けてくれたんだから、信じても良いのでは?」

「でも…誰か分からないのに」

心が読めないんでしょう?

人間なのか、魔物なのか…それとも別の存在なのか。

「もし…キルディリア魔王国軍の刺客だったら…!」

「クロティルダは敵じゃないよ」

ベリクリーデさんが、きっぱりとそう言った。

「私の大切な人なの。だから大丈夫」

「…ベリクリーデさん…」

それって…どういう。

「…心配するな。怪しい奴だが、味方だ」

地面に降ろされたジュリスさんが、頭を振りながら答えた。

「あいつに運んでもらったんだよ。キルディリアからここまで…」

「えぇっ…!?ど、どうやって…?」

「それは…その、小脇に抱えて…」

「…」

そんな…荷物を運ぶみたいに。

「空のジェットコースター。楽しかったねー」

ベリクリーデさんだけは、何故かご満悦だった。

あの人を信用して良いのかは分からないけど、ジュリスさんとベリクリーデさんの言うことなら、信用出来る。

僕は、魔力を使い切って疲弊しているイレースさんに肩を貸して、立ち上がらせた。

イレースさんの手当てをしたら、僕達も校舎の中に合流しよう。