「とにかくやるぞ!こうなったらやれることは全部やってやる」

「やれやれ。言い出したら聞かないんですから。キュレムさんは」

「分かった。やってみよう」

「任せて」

よし。全員の了解を得られた。

…あとは、全力をぶつけるだけ。

俺は、8丁の魔銃を召喚した。

「魔弾装填」

魔力をありったけ、魔銃に込める。

一撃だ。この一撃だけで良い。

後のことは考えない。今この一撃だけに全力を注ぐ。

「行くぞ、月読」

「はいはい」

無闇の準備も完了。

そして、マシュリも。

「…今一度、この身に罪の姿を」

ケルベロスから、神竜バハムートの姿に『変化』した。

やべぇ。めっちゃ格好良いじゃん。それ。

俺が霞むからやめてくれないかな。

「よし…行くぞ!」

俺は、壁の一点を狙って、魔銃の引き金を引いた。

そこにルイーシュが、そして無闇が、全ての魔力を込めた一撃を同時に放つ。

そして、神竜バハムートに『変化』したマシュリが、口から炎を噴いた。

その全ての攻撃が、凄まじい爆音と共に壁にぶつかった。

途端。

びくともしなかった壁に、ぱりんっ、と乾いた音がして、亀裂が入った。

やった。

と思ったけど、如何せんさっきの一撃に魔力を全振りしちゃったもんだから。

身体に力が入んない。

やっべ。身体ふらっふらなんだけど。

「ふへっ、あへぁぁ…」

変な声出ちゃったし。

立ち上がろうとしたけど、膝が笑ってて立てない。膝大爆笑。

その場に崩れるように座り込んでしまった。

「はぁぁ、疲れた。今この瞬間で、3ヶ月分は働きましたよ」

とか言って、ルイーシュもその場にしゃがみ込んだ。

お前の3ヶ月分の労働、ざっこ。

「くっ…」

「無闇君、大丈夫?」

同じく目眩を起こしてふらつく無闇を、月読ちゃんが腕を取って支えてあげていた。

うらやま。

そして、不甲斐ない人間達の代わりに。

神竜バハムートに『変化』したマシュリが、壁の亀裂に強烈なアイアンテールを食らわせた。

その一撃が、とどめになった。

三人の魔導師と、神竜バハムート(兼ケルベロス)の連携ファインプレーにより。

校舎を取り囲んでいた強固な魔法の壁が、ボロボロに崩れ去った。

…あばよ。

イレースちゃんよ。約束は果たしたぞ。

だが、その約束を果たすだけで、俺達はもう限界だ。

「はぁ…。ごめん、学院長…。…それに羽久も…」

悪いが俺達は、もうここまでだ。

後のことは、そっちで何とか宜しく頼む。…と、言うしかなかった。