ーーーーー…その頃、校舎を囲う壁の破壊指示を受けた、俺とルイーシュ、無闇、そしてマシュリの四人は。




「ふんぬっ!!」

俺は手近にあった拳大の石を掴み。

それを思いっきりフルスイングして、壁に叩きつけた。

…の、だが。

「畜生っ…!全然、ビクともしねぇ…!」

むしろ、石の方が負けたようで。

壁にぶつかるなり、粉々に砕けて落ちた。

強過ぎだろ、この壁。最強か?

「石では無理でしょう。魔法だって無理なのに」

地面にしゃがみ込んだルイーシュは、炎魔法を杖に纏わせ、巨大な壁に向かって飛ばした。

しかし。

決して小さくはないほどのその魔法は、壁に弾かれるようにして消えた。

…。

それを見た、無闇が。

「月読」

「はいな」

自身の持つ魔導書『死火』の化身、月読ちゃんを呼び出した。

ふわり、と無闇の背中に張り付くようにして現れる月読ちゃん。

同時に無闇は、『死火』を手にした。

おぉ…来るぞ。

「万物を灼き尽くす炎となれ、『死火』」

格好良い決め台詞と共に。

無闇の『死火』の一撃が、魔法の壁に炸裂した。

「…っ…」

思わず顔を手で覆ってしまうほどに、凄まじい、強烈な威力。

『死火』は無闇が先程言ったように、万物を焼き尽くす炎の魔法だ。

その威力は、かつて「神殺しの魔法」と勘違いされたほど

無闇は、そう言われることがあまり好きではないようだったが…。

…しかし、そんな無闇の魔法でも。

「…!マジかよ」

ここまでしても、まだ。

まだ壊れないのかよ。

「うわぁ、かったーい。無闇君の頭より硬いよ、これ」

月読ちゃんも、思わずこの反応。

まったくだぜ。

「…?人間の頭蓋骨は、ここまで硬くないぞ」

そういうことじゃないんだって、無闇君。

冗談通じない男だ。これでリア充なんだからやってられねぇぜ。

「みんな、少し下がってて」

俺もルイーシュも、無闇もお手上げ。

そこでマシュリが、ケルベロス形態に『変化』。

ケルベロスの鋭い爪が、魔法の壁に突き刺さる。

さすがはケルベロスの一撃。

物理的な威力なら、俺達の中で遥かに抜きん出ている。

…それでも。

「…!」

「…マジか…」

魔法の壁には、穴一つ、どころか傷一つついていなかった。

…嘘だろ。まさに鉄壁じゃないか。

鉄の方がまだ柔らかいんじゃね?少なくとも、ケルベロスの爪で壊れるだろ。