神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

「…」

見上げると、そこには端正な顔立ちのクロティルダ。

俺は、そのクロティルダに片手で抱かれていた。

クロティルダに抱かれて、ふわふわと空中に浮かんでいた。

…畜生。相変わらず、ムカつくくらいイケメンだな。この男。

寝てる間に、顔に落書きしてやれば良かった。…冗談だけど。

それから。

「わーい、クロティルダだ」

クロティルダのもう片方の手に、ベリクリーデが抱かれていた。

俺達はアレか。荷物か?

…つーか。

「…ケルディーサは?どうなった?」

「どうやら、この場は引き下がってくれたようだ」

マジで?

さっきの、魔力同士のぶつかり合いを制したのは、やはりクロティルダだったようだ。

「そうか…」

「お前達のお陰だ。…恩に着る」

「お前の為じゃねぇよ」

さっきも言っただろ。

お前が居なかったら、ベリクリーデが寂しがるんだよ。

だから探しに来ただけだ。

「お帰り、クロティルダ。お帰り」

ベリクリーデはクロティルダの腕に抱かれて、とても嬉しそうだった。

…なんかムカつく。

「あぁ。ただいま」

…このほのぼのとしたやり取りにも、なんかちょっとムカつく。

「良いから、まずは地面に降ろせよ。いつまで抱っこして…」

「ねぇクロティルダ、このままおうち、帰ろう」

は?

ベリクリーデ、お前何を。

「ルーデュニア聖王国に帰ろう。早く」

「このまま、か?」

「うん。何だか、急いだ方が良いと思うの」

…何だと?

キルディリア魔王国にいたくないのは俺も同感だけど、そんなに急いで帰らなきゃいけないのか?

もしかして…何か切迫した事情が?

「ベリクリーデ…。どういうことだ?ルーデュニア聖王国で、何かあるのか?」

「うーん…?…多分」

また勘なのかよ。

お前はほんっとに…直感だけで生きてるな。

そういうの良くないと思うぞ。

まぁ、現状ベリクリーデの勘は百発百中だから、あんまり文句言えないけど。

「成程、分かった。じゃあ急いだ方が良いな」

と言って。

クロティルダは、俺とベリクリーデを抱く腕に力を込めた。

…は?

「最速で行く。しっかり捕まっててくれ」

「わーい。クロティルダ号、しゅっぱーつ!」

「は?ちょ、どうするつもりだよ。どう、はぁぁぁぁっ!?」

クロティルダは、バサッ、と翼を広げるなり。

ジェットコースター並みの勢いで、空を駆けた。

天使の翼に掴まって、空を飛ぶ。

言葉だけ見ると、非常にロマンティックで、夢があるが。

現実は、恐怖のあまり絶叫するばっかりで、ロマンティックとは程遠いということをお伝えしておこう。

切実に。







そうして俺は、忌まわしきキルディリア魔王国から、ルーデュニア聖王国に帰還したのだった。

目的通り、クロティルダと共に。