神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

「お前を探しに、助ける為に来たんだよ。お前が居なきゃ、ベリクリーデが悲しむから。だから…!」

だから、その為に命まで懸けて、今、ここにいるんじゃないか。

それを何だ。探された張本人が、助けられた張本人が、「逃げろ」だと?

「お前を連れてじゃなきゃ、俺は絶対に逃げないし、一歩も引かないからな。人間様の執念深さってものを甘く見るなよ!」

「…ジュリス…」

クロティルダは珍しく驚いた顔で、俺を見つめていた。

天使であるお前の目から見たら、こんな馬鹿馬鹿しいことに意地を張っている俺は、愚かに見えるんだろうな。

だが、馬鹿なのも、愚かなのもまた人間だから。

愚かだからゆえ、この意地を貫かせてもらうぞ。

それに。

「…私も逃げないよ。クロティルダ」

ベリクリーデも、はっきりとそう言った。

「クロティルダが私のこと助けてくれたように、私もクロティルダのこと助けるから」

…よく言った、ベリクリーデ。

「…そうか。分かった」

俺とベリクリーデの決意を、クロティルダは理解してくれた。

「聞いたな、ケルディーサ。俺は彼らと共に帰らなければならない」

「…行かせると思うの?私が」 

「いいや。だが、出来れば穏便に済ませたい。天使同士の争いなど不毛だ」

その通り。

ケルディーサも、クロティルダと同じくらい物分かりが良かったら良いんだが…。

「そうね。私も嫌よ。…可愛い弟を、二度もこの手で斬らなきゃいけないなんて」

じゃあ斬らずに引き下がってくれよ。畜生。

やる気満々じゃないか。

「あなたは私には勝てないわ。もう一度、あなたを眠らせてあげる…!」

来るぞ。

何とか俺も、への突っ張りでも良い。クロティルダに加勢を…。

と、思ったが。

「クロティルダ」

ベリクリーデが、クロティルダに向かってスッ、と手を伸ばした。

途端に、クロティルダの身体が柔らかな、白い光に包まれた。

…これは…?

「ベリクリーデ、お前、何を…。…!」

ベリクリーデの白い光に包まれると同時に、クロティルダの魔力が強く、強く力を増した。

まさかベリクリーデは…クロティルダの魔力を、強化しているのか?

「お前、いつの間にそんな芸当を…!」

コソ練か?コソ練してたのか?

俺に隠れて、こっそり強化魔法の練習を…。

「…?クロティルダ頑張って、負けないでって思ったら、出来た」

「…ぶっつけ本番なのかよ…」

そうだった。ベリクリーデは、奇跡的なレベルのぶきっちょなんだった。

コソ練じゃなくて、ただの火事場の馬鹿力みたいなもんだった。

だが、コソ練の結果だろうが、火事場の馬鹿力だろうが関係ない。

クロティルダの力は、先程までとは比べ物にならないほど強くなっていた。

それは、ケルディーサの魔力を遥かに凌駕するほどに。

「…っ、神の力を使ったか。生贄ごときが、忌々しい…!」

…見苦しいぞ、ケルディーサ。

一気に形勢逆転、だな。

「お前などに、私の弟は渡さない…!」

「私はあなたの弟じゃなくて、クロティルダが欲しいの。だから…私は引き下がらないよ」

ベリクリーデは更に、クロティルダの魔力を強化した。