神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

信じられない。

魔力を他人に譲渡するとは…。

確かにそういう魔法はあるけれど、誰にでも出来ることじゃない。

ましてや、不器用なベリクリーデに出来るはずがない…はずだったのに。

「…どう?まだ要る?」

「え?あ…いや、もう良いよ」

だいぶ、身体が楽になった。

あんまり譲渡し過ぎると、今度はベリクリーデの方が疲れるぞ。

…すると。

「…茶番は終わったかしら」

ケルディーサが、俺とベリクリーデのことを…特にベリクリーデを、冷たく見下ろしていた。

おぉ、お前の存在忘れかけてたわ。ごめん。

クロティルダが目を覚ました以上、もうあんたに用はないんだが。

逃がしてくれる気は…なさそうだな。その顔を見るに。

「ケルディーサ…。もうやめろ。この二人に手を出すな」

クロティルダが、俺達を庇うようにそう言った。

「駄目よ。クロティルダ…あなたを、その小娘には渡さないわ」

「俺はそんなことは望んでいない」

「あなたが望んでいるかどうかは関係ない。私が、そう望んでいるのよ」

自分の弟の意見、完全に無視かよ。

姉としてどうかと思うぞ、それは。

姉なら、弟の意思を尊重してやれよ。

何で自分の思い通りにしようとするんだ。

「もう一度、あなたを取り戻すわ」

ケルディーサは、無情に蛇腹剣を振り上げた。

その刃は、クロティルダに向かってではなく。

「っ、ベリクリーデ!」

俺はベリクリーデの頭を押さえて、その場に伏せさせた。

ケルディーサの狙いは、クロティルダてわはなくベリクリーデだった。

この、女…!

「退きなさい、人間。その小娘をこちらに渡すのよ」

「ふざけんな。ベリクリーデの命が欲しいなら、先に俺を殺してからにしろ!」

渡す訳ないだろ。何があったって。何を言われたって。

「そう…。だったら、あなたも、まとめて処分するしかないわね」

目を細めるケルディーサ。

…やるなら来いよ。

さっきベリクリーデが魔力を譲渡してくれたお陰で、まだ戦えるぞ。

しかし。

「下がっていろ、二人共」

「クロティルダ…!」

クロティルダは、俺達を守るように前に出た。

「これは、俺とケルディーサとの問題だ。お前達を巻き込む訳にはいかない。お前達は逃げろ」

…何だと?

言うに事欠いて、お前は…!

「…ふざけんなよ、クロティルダ。お前」

俺は一瞬にしてキレた。

クロティルダの「逃げろ」という言葉に。

それだけは、何があっても聞き受ける訳にはいかない。

「俺は逃げる為じゃなくて、立ち向かう為にここに来たんだ」

逃げるつもりがあるなら、遥々キルディリア魔王国にまで来てる訳ないだろ。