「…クロティルダ…」

…起きてる。

さっきまで…おねむだったのに。クロティルダ、起きてる…。

おはよう。

「クロティルダ…。あのね、私、ジュリスと一緒にここまで…」

「知ってる。…お前が呼びかける声が聞こえていたから」

そうなんだ。

「助けに来てくれたこと、感謝する。神の力を持つお前でなければ、ケルディーサによって眠らされた俺を、目覚めさせることは出来なかっただろう」

やっぱり、あの女の天使さんが。

ケルディーサが…クロティルダのことを、ここに連れてきたんだね。

クロティルダを私のもとに行かせない為に…わざわざクロティルダを眠らせてまで。

「私、クロティルダに会いたかったの」

「あぁ」

「私と一緒に来てくれる?」

「…」

クロティルダは、じっと私のことを見つめた。

…いや。

見つめていたのは、私のことか、それとも昔の私のことか。

「もう思い出したのだろう。俺はかつて、お前を救ってやれなかった」

「うん、知ってる」

「もし、その罪滅ぼしが出来るのなら…。今度こそ、お前を守らせてくれ。…我が姫」

「…うん」

私はお姫様じゃなくても良いよ。

クロティルダが一緒にいてくれるなら、それで。

昔の私も…きっと、同じ気持ちだったはずだよ。

「お願いがあるの、クロティルダ」

「何だ?」

「ジュリスのこと助けて。それから、私のいる国を助けて」

ルーデュニア聖王国のことだ。

あの国は今、きっと危機に晒されている。

羽久とか、シルナとかが頑張って、守ろうとしてると思うけど。

でも、足りない。

彼らはまだ知らない。彼らが戦っている、真の敵を。

天使の力に対抗するには、同じく、天使の力を使わなければ。

「…駄目かな?」

「いいや、駄目じゃない」

そっか。ありがとう。

「だが、俺一人では無理だな」

「そうなの?」

「何せ、相手はあのケルディーサだからな」

クロティルダのお姉さんのこと?

「クロティルダ、お姉さんに勝てないの?」

「残念ながら。彼女は大天使の中でも指折りの実力を持つ。俺も、リューイも敵わない」

そっかー。残念。

「だが、お前が力を貸してくれれば」

「私?」

「そうだ、我が姫。お前が力を貸してくれれば、俺は誰にも負けない」

なるほど、なるほど。

それは私、責任重大だね。

「…出来るか?」

「うーん、どうかな…。私、ぶきっちょだからなー」

ジュリスにもよく言われる。

お前ほど不器用な奴は見たことないって。

凄いね。あれだけ長生きして、いっぱい色んな人に会ってきたジュリスが言うんだよ。

私が一番ぶきっちょだって。

ぶきっちょ世界代表だ。