神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

「こんなところまで、一体何をしに来たの?」

「クロティルダのこと、返して」

ベリクリーデは、ケルディーサの態度に怯えることはなかった。

「私、クロティルダのこと大切なの。だから返して」

あまりにもド直球な頼み方だが。

それに対してケルディーサは、はいともいいえとも言わず。

「…ふふふ」

代わりに、にっこりと微笑んでみせた。

相変わらず、顔だけ笑ってて目が笑ってない。

「何がおかしいの?」

「いいえ…。中身が変わっても、言うことややることは同じなのね」

「…」

「やはり…あの子を、あなたなんかに関わらせるんじゃなかった。あの子をあなたに返すことは出来ないわ」

…何だと。

「何が駄目なんだよ」

俺は、口を挟まずにはいられなかった。

「あなたには関係のないことよ、人間」

「あぁそうかい。じゃあ自分から首を突っ込ませてもらうよ」

俺だって、この場にいる当事者の一人なんだからな。

それに…どうやら。

クロティルダが突然、ベリクリーデのもとから姿をくらませた理由は…このケルディーサに関係してるようだからな。

「良いか。ベリクリーデはな、そこにいるクロティルダに会う為に、遥々こんなところまで来たんだ」

どれほど苦労したと思ってんだ。俺とベリクリーデとベリーシュが。

俺の苦労なんてのは物の数には入らないが、その為にベリーシュは、キルディリア国民に石まで投げられたんだからな。

「会わせてやってくれ」

「出来ないわ」

「どうしてだよ!」

ベリクリーデが何をしたって言うんだ。

クロティルダも、何をしたって言うんだよ。

「せめて、理由を説明しやがれ。何でベリクリーデが…」

「決まってるわ。…その子は、私のクロティルダに相応しくないからよ」

相応しくない、だと?

「ベリクリーデの何が悪いって言うんだよ。そりゃ…ちょっと頭は悪いけど」

「がーんっ」

ショックを受けるベリクリーデ。

「それ以外は良い奴だろ」

「…頭が悪い…」

まだショック受けてる。

「駄目なのよ。何を言われても」

ケルディーサは頑なだった。

…あっそ。

「どうしても、駄目だって言うんだな?」

「えぇ」

「それはお前の意思か?それとも、他の誰かの命令か?」

「これは私の意思よ。他ならぬ、私の意思」

ケルディーサはにっこりと微笑み、優しげな口調で言った。

「あの子は、観察者の役目を果たしていればそれで良いの。他には何もしなくて良い。私のもとに居てくれれば」

「それはただの束縛だろ」

あんた、ブラコンも大概にしろよ。

クロティルダ自身、そんなことは望んでないだろうに。

「口は挟ませないわ。何者にも」 

そう言って。

ケルディーサは、蛇腹剣を握る手に力を込めた。