神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

その女は、クロティルダが持っているのと同じ、蛇腹剣を持っていた。

さっきの攻撃は、これか。

だが、クロティルダの銀色の蛇腹剣とは違って。

この女の蛇腹剣は、金色だった。

色違い…なのか?

「お前…。…誰だ?」

背中に翼がある。

ってことは、お前もきっと…。

「…天使なのか?」

「…隨分と不遜な人間だこと。それが分かっていて、私に剣を向けるなんて」

やっぱり…天使だったか。

不遜で悪かったな。

生憎、信仰心なんて欠片も持ち合わせていないもので。

「ここは何処なんだ?…あんたが作った場所なのか」

「答える義務はない。…と言いたいところだけど、あなたがいるなら、そうはいかないわね」

その天使は、俺ではなく。

ベリクリーデの方を見て、そう言っていた。

妙に、「あなた」という言葉を強調しているように聞こえた。

「この期に及んでもまだ、あなたはまた…私の邪魔をするのね」

憎悪さえ滲ませて、ベリクリーデを睨む。

「…邪魔…?私、あなたの邪魔をしたの?」

だが、ベリクリーデには全くその自覚はないようだった。

「忘れたとは言わせないわ…。あなたは『前回』もそうだった」

「『前回』…」

「クロティルダを…私の可愛い弟を惑わせて、道を踏み外させようとする。…本当に忌々しい存在だわ」

…!

この女、今なんて…。

「弟…?お前、クロティルダの姉なのか?」

「えぇ、そうよ」

クロティルダの姉と名乗った天使は、にこりと微笑んでこちらを見た。

顔は笑ってるけど、目が笑ってない。

「私はクロティルダの姉。名をケルディーサ。上位天使ミカエル様に仕える、”大天使アークエンジェル“第3位、メタトロンの称号を持つ天使」

ケルディーサという名前の天使は、そう自己紹介した。

こいつが…。クロティルダの、姉。

いたのか、そんなの…。クロティルダの奴、自分に姉がいるなんて一言も言わなかったぞ。

「…ベリクリーデ、お前は知ってたのか?」

「?」

「クロティルダに姉がいること、知ってたのか?」

「…覚えてなかった。でも、今思い出した」

そうか…。

「クロティルダのお姉さん…。…ケルディーサ…」

「私のことも弟のことも、気安く呼ばないでもらいたいわね」

クロティルダは、ベリクリーデにとても優しかった。

優しいと言うか、甘やかしてたもんな。

だからこそ、ベリクリーデはクロティルダに、とてもなついていた。

だけど…この女、ケルディーサは違う。

ベリクリーデのことを、激しく憎悪しているようだった。

…どうして、ここまで。

「…生贄の分際で」

ケルディーサは、吐き捨てるようにそう言った。

生贄…?どういうことだ?