神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

…一同は、そのまましばし沈黙したが。

その沈黙を破ったのは、シルナだった。

「…シュニィちゃん。フユリ様はなんておっしゃってた?」

「え…」

「フユリ様も、このことはもう知ってるんだよね?」

「あ…はい。勿論です」

頷くシュニィ。

…フユリ様…。

ナツキ様の妹であるフユリ様は、今、どんな気持ちなのだろう?

兄の国が他国に攻め込まれ、兄の命までもが狙われている状況で…。

「フユリ様も…責任を感じていらっしゃるようでした。こうなったのは、元を正せばルーデュニア聖王国にも責任があると…」

「…そっか…」

…優しい人だからな。フユリ様も。

自分の責任じゃなくても、心を痛めていらっしゃる。

…丁度、今のシルナと同じように。

「だからって、アーリヤット皇国に加勢する、とは言わないよな?」

「勿論です…。可能な限り平和的な解決を望む、という声明を発表するそうですが、それ以上は関与しない、とのことです」

「…賢明な判断だな」

フユリ様の個人的な感情では、肉親であるナツキ様を助けたいだろう。

いくら嫌われていても…。血の繋がった兄妹なのだから。

それでも、国と国との問題に、私情を挟むことは出来ない。

フユリ様は自分の気持ちを押し殺し、自国の民を守る為に。

戦争の火の粉が、ルーデュニア聖王国の国土に降りかからないように。

対岸の火事が鎮火するのを、じっと見つめていることしか出来ないのだ。

「…フユリ様…。…お辛いだろうに」

「えぇ、そうだと思います…。…とても心を痛めていらっしゃいました」

…俺だって、他所の国だからって、ナツキ様の自業自得だからって…戦争なんて望んでない。

戦争になって、巻き込まれて苦しむのは。

王様じゃなくて、末端の兵士…国民達なのだ。

かつてのナジュのような…何の罪もない、ただその国に生まれたというだけで、辛い運命を背負わされた人々なのだ…。