神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

で、満足するまで角砂糖を食べ、糖分補給したベリクリーデは。

「よーし。完全ふっかーつ!」

「…良かったな…」

改めて、お前が戻ってきてくれて安心したよ。

ベリーシュが言っていた。

ベリクリーデはこの国で非魔導師として受けた、数々の酷い扱いのせいで。

すっかり気持ちが参ってしまって、身体の奥に閉じこもって眠ってしまったと。

そのベリクリーデが、ようやく起きて、こうして表の人格として現れた。

「…ベリクリーデ、お前大丈夫か?」

「ふぇ?」

俺は、ベリクリーデの間抜け顔をじっと観察した。

…見たところ、ショックを受けているようには見えない。

いつもの、ぽやんとした表情だ。

…まさか、この国で味わった辛いことを、全て忘れている訳ではないだろうが。

もう絶対、あんな酷い目には遭わせないぞ。

ベリクリーデに石を投げる者がいたら、今度こそ俺も拳骨を食らわせてやる。

俺はベリクリーデやベリーシュみたいに優しくないからな。

「?どうしたの、ジュリス。怖い顔」

「え?いや、何でもないよ」

「怖い顔しちゃ駄目だよ。ジュリスは格好良いんだから。ほらほら笑ってー」

「ちょ、やめろって」

ベリクリーデはあろうことか、手を伸ばして俺の頬をつまんで、無理矢理笑わせようとしてきた。

「はっ!変顔すれば良いのかな?そうしたら笑ってくれる?」

「はぁ?」

「じゃあ行くよー…。あっぷっぷ」

「…笑わねーから。やめろ」

間抜け顔が、余計間抜け顔になっただけじゃん。

だけど、この様子を見ると…結構元気になったみたいだな。

良かった…。

「…それよりも、ベリクリーデ」

「なーに?変顔第二弾しよっか?」

「それはやめろ。それより、お前この国に来た目的を忘れてないよな?」

「…?」

おい。首を傾げるなって。本当に忘れてるのか?

「クロティルダのことだよ」

「おぉー。そうだ。クロッティ、早く会いたいね」

俺は別に会いたくないけどな。

「あの後、何も音沙汰ないから…。多分、シルナ・エインリー達は無事にルーデュニア聖王国に帰ったんだろうが…。でも、まだ安心は出来ない」

「…」

俺の幻覚魔法が見破られる…ことはないと信じたいが。

キルディリア魔王国には、優れた魔導師…上級魔導師様、とやらがいるらしいからな。

航海の途中で何かあって、あいつらの正体がバレるようなことがあったら。

それに、仮にルーデュニア聖王国に辿り着いたとしても、安心は出来ない。

無理矢理、シルナ・エインリーを自国に引き入れようとしたあの女王のこと。

何としても取り返そうと、ルーデュニア聖王国にまで手を出していないとも限らない。

もしかしたら、今頃あいつらは戦っているかもしれない。

そう思うと、とてもじゃないが悠長なことはしていられなかった。