神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

こんなこと言うと、驕ってるように聞こえるかもしれないけど。

相手が悪過ぎるよ。…さすがに。

この人達の戦い方は、凄く…そう、「綺麗」なのだ。

この人は、綺麗に勝とうとしている。

自分のお得意の魔法を相手に見せつけ、圧倒し、華麗に、美しく勝負を決めようとしている。

自分の実力、才能に自信を持っているからこそ、自然とそういう戦い方になるんだろう。

自分は、「あの」キルディリア魔王国軍の上級魔導師なのだ、という自負。誇り。プライド。

それがむしろ、自分に枷をつけていることに気づいていない。

悪いけど、僕にはその気持ちは全然理解出来ない。

僕にとって、勝利は結果でしかない。戦い方なんてどうでも良い。

どれほどみっともなくても、格好悪くても。

勝つ為なら、自分が生き残る為なら、貪欲に、泥臭く、石に齧りついてでも生きる。

綺麗に勝つ必要なんてない。

綺麗だろうが醜かろうが、負けたら終わりなんだから。

勝てば良いのだ。勝ちさえすれば。

そういう育てられ方をしてきた。だから僕らは、今でもそういう戦い方をする。

対極な戦闘スタイルを持つが故に、それが今、こうして圧倒的な差を生んでいる。

この人は、決して弱くはない。

むしろ強い。相当の実力を持つ魔導師なんだってことはよく分かる。
 
この人が僕らのように、泥臭い勝負を挑んできたとしたら、もっと苦戦していただろう。

もしかしたら、負けていたかもしれない。

でも、この人自身無意識に、「綺麗に」勝とうとするあまり。

それがこの人の足枷となり、こうして戦局に現れている。

…そのことに気付けないなんて、憐れな人だ。

そして、彼女の敗因はもう一つ。

「調子に乗るな!このっ…!…mtors!」

また、さっきの風魔法。

だけど僕は避けなかった。その凄まじい一撃を。

再び、『八千歳』がすかさず糸を伸ばして、僕を空中に弾き飛ばすことで回避。

「くっ…!」

さっきも同じことやったのに、学習しないね。

この人の風魔法は、確かに凄い。

初見では避けられなかったし、もう一度当たれば、今度は致命傷を負うことは分かっている。

しかも、生憎、今の僕は先程負った負傷のせいで、身体の動きが鈍い。

でも、当たらなければ無傷だから。

同じ攻撃ばかりじゃ、さすがにワンパターン過ぎる。

敵の攻撃の間合いを完全に見切った『八千歳』が、適格に僕を空中に回避させてくれる。

『八千歳』が僕を救出する速度が、少しでも遅ければ。

少しでもタイミングがズレれば、僕は文字通り、身体のど真ん中に風穴が開くことになる。

だけど、僕は一切、そんな心配はしていない。

『八千歳』なら、絶対にタイミングを見誤るようなことはない。

そう信じているから。

ならば、もうどんな敵にも決して負けることはない。