神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

自業自得…。身から出た錆…。

フユリ様に対する当て付けの為に、世界魔導師保護条約なんて、馬鹿げた条約を考えた報い。

全てはナツキ様が撒いた種。

…それはまぁ…そうなのかもしれないけど…。

実際、そうなんだろうけども…。

…でもさ。

「…責任、感じるだろ?俺達も…」

「なんで?」

「何でって…。ナツキ様はハクロとコクロに操られてたから…。そして、その原因は俺達に…」

もし、俺達のせいでナツキ様がハクロとコクロに操られてなかったら。

ナツキ様は、世界魔導師保護条約なんて考え出さなかったかもしれない。

つまり、回り回ってこれは…俺達にも責任の一端が、

しかし。

「知ったことじゃないよ。騙される方が悪いんだ」

「うっ…」

元暗殺者らしい、非常に割り切った答え。

更に。

「一言一句同感です。我々には関係ありません。放っておきなさい」

と、一喝するイレース。

…うん。お前はそう言うと思った…。

「で、ですが…イレースさん…」

それはあまりにも薄情なのでは、とシュニィが抗言しようとしたが…。

「下手に口を出せば、こちらにも飛び火する恐れがあります。馬鹿共が勝手に争っているなら、好きにさせておきなさい」

イレースは、やはり容赦がなかった。

馬鹿共、って…。

「その通りですね。戦争なんて、馬鹿のやることですよ」

「…ナジュ…」

「ましてや、魔導師と非魔導師の戦争なんて、不毛以外の何物でもない。…関わらない方が良いです」

ナジュの声は真剣そのものだった。

その言葉には、不毛な戦争に運命を翻弄された、当事者故の大きな説得力と重みがあった。

「…ナジュ君…」

そんなナジュの気持ちが理解出来るのだろう。

戦争なんて絶対反対な、平和主義者である天音も…何も言えなかった。

自分が何を言っても、自分の言葉に、ナジュ以上の説得力を持たせることは出来ない。

それを誰より分かっているからこそ、何も言わないのだ。

…そして、俺やシルナも。

「…」

「…」

お互いに顔を見合わせるだけで、何も言わなかった。

令月やすぐりの言うことが正しい。イレースも、ナジュもだ。

冷徹なようだが、これは俺達には関係のないことだ。

キルディリア魔王国に攻め込まれたのはアーリヤット皇国だ。俺達ルーデュニア聖王国じゃない。

首を突っ込むべきじゃない。

下手をすれば、こちらにも飛び火する恐れがある…。

…アーリヤット皇国には気の毒だが、この件に、俺達が口を挟むことは出来なかった。