神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

魔法は、使い手によってその質も量も様々だ。

この人は、敵の魔法を「再現」して、全く同じ魔法を使うことが出来る。

だけどそれは、さっきイレースさんが言った通り、あくまで真似事だ。

相手の魔法を「再現」こそ出来ても、本当に相手そのものになり変われる訳じゃない。

使う魔法が同じでも、その魔法を使う為の出力…つまり、その者が持つ魔力の量によって、勝ち負けが決まる。

だから、ここからは…同じ魔法を使う術者同士の、純粋な魔力量の勝負になる。

魔力量の勝負…。…こうなると、イレースさんにとっては不利かもしれない。

イレースさんだって、保有魔力が少ない訳ではない。

むしろ、魔導師の中では、魔力が多い方に分類される。

だけど…今回は相手が悪い。

このような再現魔法を仕掛けてくる…ってことは、この男、自分の魔力量に相当な自信があるのだろう。

自分の魔力量の方が多い。相手と同じ魔法を使っても、自分の魔法の方が強いと確信しているからこそ。

だから、こんな作戦を仕掛けてきたのだ。

それにキルディリア魔王国は、そのお国柄、生まれつき保有魔力量に優れた魔導師が多いと聞く。

純粋な魔力量の勝負になると、イレースさんの方が圧倒的に不利。

…こうなったら…。

「イレースさん、あなたは…」

「黙っていなさい」

あ、はいごめんなさい。

黙ってろと睨まれたんで、僕、黙ってます。

良い子ですからね。

「さっきから聞いていれば、グダグダと勝手なことばかり…」

あー、これヤバいですね。

心を読むまでもない。

イレースさんは、ふつふつと燃え滾る怒りを募らせていた。

学院長だったら、すぐさま逃げ出すレベル。

「人の真似をすることしか出来ない愚か者が、この私に何ですって?」

「ふん…。虚勢を張っていられるのも今だけだ」 

「やかましい。人の真似をするだけなら、九官鳥にでも出来ます」

九官鳥に対する風評被害ですよ。それは。

「自信があるならかかってきなさい。相手になります」

おぉ、イレースさんさすが。格好良い。

この人が怯えるところを見てみたいですね。僕は。

すると。

天音さんが、おずおずとそんなイレースさんの背中に声をかけた。

「い、イレースさん。一人だと危ないよ。僕も一緒にたたっ、」

「すっこんでなさい」

「あ…。ごめんなさい…」

駄目ですよ、天音さん。今は。

下手に手出ししたら、天音さんも消し炭にされますよ。

「大した自信だ、女。…思い知らせてやる」

敵魔導師は、イレースさんと同じ雷魔法を杖に纏う。

イレースさんもまた、同じ雷魔法を杖に纏わせた。

それはすなわち、魔力と魔力のぶつかり合いだ。

より、強大な魔力をぶつけた者の勝ち。

保有魔力の量に自信を持つ、キルディリアの上級魔導師が相手では、さすがにイレースさんの方が劣勢だろう。

「な、ナジュ君…!やっぱり、加勢に…」

僕と同じことを考えた天音さんが、顔を真っ青にして言った。

…だけど。