神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

さて、どんな魔法を使ってくるのかと思ったら。

「yopc」

男性上級魔導師が、イレースさんに向かって、とある魔法をかけた。

何が起こるかと、思わず身構えたが。

「…何です。今何かしましたか」

「さぁ、どうだろうな」

イレースさんの身には、何も変化がないように見える。

本当に魔法を使ったのか?と歌買うほどに。

しかし、魔法の効果は確かに表れていた。

「rhundet」

その上級魔導師が使ったのは、雷魔法だった。

イレースさんが一番得意な魔法である。

しかも、その雷魔法…。

「っ…!これ、イレースさんと同じ…!?」

天音さんも気づいたようだ。

同時にイレースさんも気づいたようで、露骨に顔をしかめた。

…成程。そういう魔法ですか。

そう。イレースさんと同じ雷魔法。

…イレースさんが使うのと、「全く同じ」雷魔法だ。

通常、雷魔法でも炎魔法でも水魔法でも、どんなに基礎的な魔法でも。

使っている魔法そのものは同じでも、使い手によって、多少の差が生まれる。

さっきの風魔法が良い例ですよ。

僕の風魔法は、風をぎゅっと凝縮させて、風の刃を作ることに長けている。

だけど、さっきの敵上級魔導師の風魔法は、風力の強さにだけ全振りしていた。

残念ながら、僕にはあのような芸当は出来ない。

使っている魔法の種類こそ同じでも、使い手の特技や保有魔力量の差により、個人差が出るものなのだ。

でも、今の雷魔法。

個人差も何もない。イレースさんが普段使っているのと、全く同じ雷魔法。

持続力よりも、瞬間的な火力を優先し。

一撃で、一瞬で敵を無力化する…。イレースさんらしい、無慈悲で無駄のない雷魔法。

その雷魔法を、完全に再現していた。

不気味なくらいに。

「なかなか良い魔法だ。荒っぽいようにも見えるが、その実、かなり繊細な魔法」

イレースさんと全く同じ魔法を使った敵上級魔導師は、優越感に浸った表情で言った。

「さすがはイーニシュフェルト魔導学院の魔導師。伊達ではないと言ったところか」

「…気色悪い」

まるで、鏡に映った自分の姿を見せられているようで。

イレースさんは、心底軽蔑した眼差しで、そいつを睨んだ。

「他人の真似をすることしか能が無いんですか」

「合理的な魔法だと言ってもらおう。敵が強ければ強いほど、それを『再現』する私の魔法もまた、強くなる。そして」

「…!」

敵上級魔導師は、バチバチと強力な雷魔法を杖に纏わせた。

「ここからは、純粋な魔力差の勝負になる」

…これは、非常にマズいですね。

予想以上に、この敵…面倒ですよ。