神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

ーーーーー…一方、その頃。

見たこともないほど、強烈な風魔法によって。

令月さんは、遥か後方に吹き飛ばされていった。

そして、何か固いものにぶつかったような、大きな破砕音が聞こえてきた。

多分、学生寮辺りまで飛ばされたんだろう。

凄い勢いですね、今の。

僕も、学院で風魔法を教える立場として、驚嘆に値しますよ。

是非とも、その風魔法のイロハを教えて欲しい…ところだけど。

そんな余裕はなさそうですね。

「れ、令月さん…!急いで追いかけなきゃ…!」

令月さんが吹っ飛ばされたのを見て、天音さんは血相を変えて、走り出そうとした。

僕は、その腕を取って止めた。

「必要ありませんよ、天音さん」

「ナジュ君…!でも、」

「さっき、すぐりさんが向かっていたでしょう。あの二人なら大丈夫です」

「…あ…」

令月さんが吹き飛ばされた瞬間、すぐりさんはすぐさま、令月さんの身体を糸魔法で覆った。

無傷とは行かないだろうが、致命傷ではないはずだ。

今頃すぐりさんは、令月さんに合流して、援護しているはず。

あの二人が一緒にいるなら、僕達は必要ない。

むしろ、余計な手出しをしない方が良いくらいだ。

…それに。

こちらとしても、援護をしてあげる余裕はなさそうだ。

何せこちらにも、キルディリア本隊の上級魔導師がいる。

彼らを相手しなければならないのだ。…僕と天音さんとイレースさん、この三人で。

「あなたは下がっていなさい」

イレースさんが、天音さんにそう言った。

「で、でも。僕も光魔法くらいなら…」

「自信がないなら下がっていなさい。足手まといです」

「うぐっ…」

有無を言わせないところが辛辣ですね。

でもイレースさん、大丈夫ですよ。

「大丈夫です。天音さんはいざとなったら、僕やイレースさんより強いですよ」

「は?」

「な、ナジュ君っ…!そのことは…」

おっと。まだ内緒なんですか?

もうバラしても良いと思うんだけどなぁ。格好良いし。

「で、でも…。いざとなったら…僕も戦うよ…」

おっと。覚悟を決めましたか?

「だから…お願いだから、無理しないで」

「分かりました」

では、リクエストにお応えして。

2、3回死ぬくらいで我慢しましょうかね。

「…たった三人がかりとは。舐められたものだ」

と、蔑んだ眼差しを向ける、キルディリア上級魔導師。

「舐めてるつもりはないんですけどね」

「かの、イーニシュフェルト魔導学院の教師の実力がどんなものか…。…この目で確かめさせてもらおう」

確かめなくて良いから、帰ってくれないかなぁ。

駄目ですか?…駄目ですよね?そっかぁ。