神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

しかし、僕の評判は、とても褒められたものではなかった。

当たり前だけど。

「薄汚い暗殺者集団。…本当におぞましい。その歳であなたの手は、多くの罪なき人々の血で濡れている」

「…」

…知ってる。

「善悪の判断のつかない子供がやったこと…。…だからこそ、余計におぞましい」

「善悪の判断なら、ちゃんとついてるよ」

僕が行った殺人は全て、命令によるもの。

だけど、善悪の判断もせず、ただ盲目的に、命じられるがままに殺していた訳じゃない。

善悪の判断ならついている。

僕は、人殺しは罪だと分かっていながら、それでも人殺しを続けたのだ。

心を殺し、何も感じないようにして。

「ならば、なおのこと悪い。あなたは人間じゃないわ。獣よ。怪物よ。この世に生きていてはならない存在だわ」

「…」

何だか酷い言われようだね。

言ってること自体は間違ってないから、否定のしようがない。

「本当におぞましい…。…あなたのような人間を、この手にかけなければならないことは、私の人生の恥だわ」

「そう」

「でも、それが私の役目なのだから、やりましょう」

と言って、その女性魔導師は杖を構えた。

「あの世に行って、あなたがこれまで殺した人々に謝ってくると良いわ…!」

杖を振り、自慢の魔法を放とうとした、その時。

「っ…!?」

杖が動かなかった。

彼女は驚いた顔をして固まったが、僕にはその理由が分かっていたから、驚かなかった。

「…さっきからさー、隨分勝手なこと言ってくれるじゃん」

…『八千歳』。

壊れた学生寮の、瓦礫の上に『八千歳』が立っていた。

聞いてたんだね。…さっきの話。

僕が吹き飛ばされた時、『八千歳』も一緒に、こちらに向かってきたのだ。

…恐らくは、僕を一人にしない為に。

「こっちの事情、何も知らない癖に。偉そうにつべこべ口出しして欲しくないんだけど?」

「…あなた…。…もう一人の暗殺者ね」

敵は、『八千歳』のことも知っていたようだ。

憎悪の眼差しで、『八千歳』を睨んでいた。

だけど当然、『八千歳』はその程度では動じない。

慣れてるから。僕も『八千歳』も。そんな目で見られるのは。

「薄汚い暗殺者が…」

「じゃあ、キルディリア国軍の魔導師であるあんたは、さぞや小綺麗なんだろうね」

『八千歳』の皮肉が炸裂。

「あんただって人、殺してるんでしょ?だったら、同じ穴のムジナだよ」

という、『八千歳』のもっともな皮肉に。

敵魔導師は、一瞬にして怒りが沸点に達したらしく。

「ふざけないで!誇り高きキルディリア魔王国軍の上級魔導師である私を、お前達暗殺者などと一緒にしないで!」

本気で怒り始めた。

誇り高き…。…誇り高き、か。

結局この人、その「誇り」で人殺しの罪を正当化しているだけで。

やっていることは、僕達薄汚い暗殺者と変わらないんだってこと、分かっていないらしい。