何故このタイミングで、キルディリア魔王国がアーリヤット皇国に攻め込んだのか。
その理由が分かった気がする。
「…例の、世界魔導師保護条約、のせいか?」
「…えぇ。それが口実だと思います」
…そうだよな。
世界魔導師保護条約…。…これは、アーリヤット皇国の皇王であるナツキ様が提唱し、世界各国に条約の締結を迫った。
魔導師を保護する条約、と言えば、非常に聞こえが良いが。
これは、魔導師を守る為ではなく、魔導師を国家の道具とする条約なのだ。
魔導師は全て国の管理下に置かれ、著しく自由を制限される。
おまけに、条約締結国の間で、国籍を問わず自由に魔導師を貸し借りする、なんて項目も含まれている。
しかも、有料で。
これじゃ、完全に人身売買だ。
魔導師排斥論者のナツキ様は、親魔導師国家であるルーデュニア聖王国に当て付けるように、この条約を考え出し。
そして、それを世界サミットで提示。
目の敵にしていた妹のフユリ様を、強引に他国に幽閉することで、どさくさ紛れに条約の締結、一歩前まで迫ったが…。
色々あって、この非人道な条約の締結は、お流れになった。
俺達がハクロとコクロの正体を暴いたことで、今やナツキ様の洗脳も解けているはず。
アーリヤット皇国のルーデュニア聖王国侵攻も含めて、この条約についても、このまま水に流して、無かったことにして欲しい。
そして、そうなるだろうと安心していたところだったのに…。
…しかし、キルディリア魔王国は、このまま目を瞑る気はなかった。
ナツキ様は、ルーデュニア聖王国しか眼中になかった。
あの魔導師保護条約のことも、ナツキ様個人が魔導師を嫌っているから、でもあるが。
親魔導師国家であるルーデュニア聖王国、そしてフユリ様に対する当て付け、の側面が強い。
要するに、フユリ様に対する盛大な嫌がらせのつもりで、あんな条約を考え出したのだ。
…でも、その「嫌がらせ」は、フユリ様のみならず。
超親魔導師国家である、キルディリア魔王国の逆鱗に触れることとなった…。
魔導師の人権を奪うこの条約は、締結には至らなかったものの。
キルディリア魔王国に、大きな危機感を抱かせることに繋がった。
「このまま、魔導師排斥論者のナツキ様が統べるアーリヤット皇国を放置していれば、いずれキルディリアにも魔の手を伸ばしてくるかもしれない…。…キルディリア側は、そう判断したのでしょう」
「本当に世界魔導師保護条約が締結されたら、一番割を食うのはキルディリアだもんな…」
いくら島国とはいえ、対岸の火事と傍観している訳にはいかない。
このまま、アーリヤット皇国を中心にして、世界に反魔導師思想が広まっていったら…。
…その結果、再びキルディリア魔王国の国民達は、迫害の憂き目に遭うかもしれない。
ならばいっそ…。やられる前に、やる。
それでキルディリア魔王国は…突然、アーリヤット皇国に宣戦布告を…。
…話は理解した。
理解した、けど…。
「なーんだ。じゃ、じごーじとくじゃん」
「身から出た錆だね」
元暗殺者組のすぐりと令月が、それぞれそう言った。
…あっけらかんとして。
その理由が分かった気がする。
「…例の、世界魔導師保護条約、のせいか?」
「…えぇ。それが口実だと思います」
…そうだよな。
世界魔導師保護条約…。…これは、アーリヤット皇国の皇王であるナツキ様が提唱し、世界各国に条約の締結を迫った。
魔導師を保護する条約、と言えば、非常に聞こえが良いが。
これは、魔導師を守る為ではなく、魔導師を国家の道具とする条約なのだ。
魔導師は全て国の管理下に置かれ、著しく自由を制限される。
おまけに、条約締結国の間で、国籍を問わず自由に魔導師を貸し借りする、なんて項目も含まれている。
しかも、有料で。
これじゃ、完全に人身売買だ。
魔導師排斥論者のナツキ様は、親魔導師国家であるルーデュニア聖王国に当て付けるように、この条約を考え出し。
そして、それを世界サミットで提示。
目の敵にしていた妹のフユリ様を、強引に他国に幽閉することで、どさくさ紛れに条約の締結、一歩前まで迫ったが…。
色々あって、この非人道な条約の締結は、お流れになった。
俺達がハクロとコクロの正体を暴いたことで、今やナツキ様の洗脳も解けているはず。
アーリヤット皇国のルーデュニア聖王国侵攻も含めて、この条約についても、このまま水に流して、無かったことにして欲しい。
そして、そうなるだろうと安心していたところだったのに…。
…しかし、キルディリア魔王国は、このまま目を瞑る気はなかった。
ナツキ様は、ルーデュニア聖王国しか眼中になかった。
あの魔導師保護条約のことも、ナツキ様個人が魔導師を嫌っているから、でもあるが。
親魔導師国家であるルーデュニア聖王国、そしてフユリ様に対する当て付け、の側面が強い。
要するに、フユリ様に対する盛大な嫌がらせのつもりで、あんな条約を考え出したのだ。
…でも、その「嫌がらせ」は、フユリ様のみならず。
超親魔導師国家である、キルディリア魔王国の逆鱗に触れることとなった…。
魔導師の人権を奪うこの条約は、締結には至らなかったものの。
キルディリア魔王国に、大きな危機感を抱かせることに繋がった。
「このまま、魔導師排斥論者のナツキ様が統べるアーリヤット皇国を放置していれば、いずれキルディリアにも魔の手を伸ばしてくるかもしれない…。…キルディリア側は、そう判断したのでしょう」
「本当に世界魔導師保護条約が締結されたら、一番割を食うのはキルディリアだもんな…」
いくら島国とはいえ、対岸の火事と傍観している訳にはいかない。
このまま、アーリヤット皇国を中心にして、世界に反魔導師思想が広まっていったら…。
…その結果、再びキルディリア魔王国の国民達は、迫害の憂き目に遭うかもしれない。
ならばいっそ…。やられる前に、やる。
それでキルディリア魔王国は…突然、アーリヤット皇国に宣戦布告を…。
…話は理解した。
理解した、けど…。
「なーんだ。じゃ、じごーじとくじゃん」
「身から出た錆だね」
元暗殺者組のすぐりと令月が、それぞれそう言った。
…あっけらかんとして。


