神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

それは、見上げるほどに高い壁だった。

「…くそっ…!」

このままじゃ、校舎の中と外で分断されてしまう。

慌てて振り向き、急いで校舎の中に戻ろうとしたが。

「っ…!」

魔力の壁に触れた途端、バチンッ!と鋭い静電気のような痛みを覚え、慌てて手を離した。

壁の内側に入ろうとしても、最早手遅れだった。

ほぼ同時に、すぐりが糸魔法を令月が小太刀を振るって、魔力の壁を叩き割ろうとした。

しかし、それらの攻撃は、壁を壊すどころか。

かすり傷一つ付けることは出来なかった。

「っ…!何だ、この壁…!」

「離れて」

ケルベロスマシュリが、鋭い爪で壁を攻撃した。

しかし。

万物を破壊する、魔物の爪でさえ。

壁に触れた途端、感電したような音がして弾き返された。

「っ…!」

マシュリでも駄目なんて。どうやってこの壁、壊せば良いんだ。

「ど、どうしよう…!中には、まだ学院長先生と、羽久さんが…!」

血相を変えて、天音は呻くように言った。

そう、そうなのだ。

俺達は第一陣…突入部隊の来訪にホイホイと釣られて、こうして校舎の外に出てきてしまった。

一方学院長と羽久は、まだ校舎の中にいる。

多分、まだ学院長室にいるんじゃないのか。

ただでさえ少ない戦力を、分断されてしまった。

思えば、これが敵の罠、作戦だったのだ。

なんてことだ。

俺達と学院長を分断し、敵にとって目標である学院長を、孤立させることが…!
 
敵を誘き出したつもりが、逆に誘き出されていた。

…なんたる不覚。

「マズいですね。もし、中に敵が侵入してしまったら…」

「あぁ…。マズいなんてものじゃ済まないな」

学院長を守るどころじゃなくなるぞ。

何とかして、この壁を壊さなくては…。

…しかし。

「あなた方を校舎の中には行かせません」

巨大な壁を展開した、第二陣の後ろから。

満を持して、本命の第三陣が到着した。

第三陣は、僅か数名の魔導師だった。

だが、そいつらは自慢げに、首から金色のカードをぶら下げていた。

…羽久から聞いたよ。

その金カード持ちって、キルディリア魔王国では、選ばれし「上級魔導師」様なんだろ?

つまり、一人一人が歩く戦車みたいなものだ。

…なんてことだ。

こいつら、最初からこれが目的だったのか。

俺達を校舎の外に釘付けにして、その間に別働隊を校舎の中に…。

で、学院長を拉致する腹積もりか。

小癪な…。