神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

なんて言えば良いんだろうな。この状況。

こいつがどれほどアホなこと言ってるか、理解出来るだろうか。

銀行強盗が包丁を手に押し入ってきて、「私はお金が欲しいだけなんです。抵抗するつもりはありません。お金さえくれれば帰ります。」

…って、言ってるようなもんだぞ。

渡す訳ねーだろ。頭イカれてんのかお前。

「ふざけんな、バカちん。手ぶらで帰れ」

おっと、しまった。つい本音が。

「キュレムさん、相手は一応キルディリア国軍の兵士なんですよ。もっと言葉遣いってものに配慮しないと」

「お、おぉ…そうだな、ルイーシュ。お前の言う通り…」

「そこはちゃんと、『おふざけでございますか?尻尾を巻いてお帰りください』って言わないと」

「…意味変わんなくね?」

良いじゃん。だって本当に言ってることバカちんなんだもん。

バカちんにバカちんって言って、何が悪いんだ。

「ウチのパンダを寄越せとは、厚かましいにも程があります。さっさと帰りなさい」

ほら。イレースちゃんもこう言ってる。

学院長、パンダ呼ばわりだけど。

「…ねー、やっぱりトラップ発動して良い?」

「いつでも出来るよ」

あまりに厚かましい欲求に、元暗殺者組もこの反応。

そうだな…。…良いんじゃね?いっそやっちゃっても。

話し合いをする気があるんだか、ないんだか。

「…どうしても、聖賢者様をお渡しいただけませんか?」

「当たり前だろ」

「…分かりました。…それでは、仕方ありませんね」

「…!」

さっきまで穏やかだった女性兵士の態度が、一変した。

こいつ、まさか。

「っ、マズい!」

いち早く、心を読んだナジュがそう叫んだが。

その時には、もう遅かった。

「lalw」

その女性兵士が杖を掲げ、魔法を発動した瞬間。

後ろに控えていた第二陣の魔導師兵達も、同じように杖を掲げていた。

集められた膨大な魔力が、学院の校舎のみをぐるりと取り囲むように。

信じられないほど高く、分厚く、大きな魔力の壁を作り出した。