神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

それだけではない。

「よしっ!仕留めた!」

キルディリア兵が魔法で作った刃で、ナジュの身体に傷をつけた。

おいおい…。…避けろよ。

しかし。

「…ふふふ。本当に仕留めましたか?」

「えっ?」

ナジュは不敵に笑って、自分を切りつけた魔法の刃を握り締めた。

「ど、どういうことだ?確実に、致命傷を…」

「いやぁ、痛かったなー。蚊が止まったのかと思いましたよ」

「うぎゃぁぁぁぁ!ば、バケモノ!」

…ごめんな、そいつ不死身なんだわ。

不死身とはいえ、痛覚は普通の人間と変わらないって聞いてたんだけど。

わざと食らってんじゃねーよ。

明らかに、人様をおちょくる為にわざと食らっただろ。

「はぁ…。ナジュ君は、もう…」

それを見た天音が、案の定呆れている。

そして。

「その人はバケモノじゃないよ」

ナジュと天音を守るように、前に出たのは。

さっきまで、猫用おやつに夢中になっていたはずのマシュリだった。

そのマシュリが、賢者の石で作られた指輪を捨て。

力を解放し、ケルベロスの姿に『変化』した。

「本物のバケモノっていうのは、こういうモノのことを言うんだ」

ケルベロスマシュリの、鋭い爪が。

たった一振りで、キルディリア兵を一網打尽に。

おぉ、すげぇ。かっけー。

これが…今のイーニシュフェルト魔導学院の戦力。

聖魔騎士団にだって引けを取らない。

「…これは、俺達の出る幕はないな」

無闇が、俺とルイーシュにそう言った。

奇遇だな、無闇君よ。
 
俺もそう思っていたところだ。

こいつらだけで、充分強いじゃん。

俺達が、何の為に来たのか分からないじゃないか。