神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

呆然と、その様子を眺める大人達。

その横で、すぐりはニヤニヤしながら、次々に透明な糸をピン、と引っ張った。

「こんなこともあろうかと、学院の敷地内のあちこちに、透明な糸を張り巡らせてるんだよねー」

…悪魔だ。悪童だ。

しかも、悪質な罠はこれだけではない。

突入した部隊が次々にすっ転ぶ有り様を見て。

どうやら、罠が仕掛けられていると警戒したらしいキルディリア軍。

転ばないよう、匍匐前進をすることで近寄ってこようとした。

しかし。

突然、侵攻を続けるキルディリア兵達の下にある地面が、大きく沈み始めた。

狼狽えた彼らは、慌てて上体を起こし、立ち上がって逃げようとしたが、

一度トラップが起動してしまうと、最早回避することは不可能だった。

地面に掘られた巨大な落とし穴に、さながら蟻地獄のように巻き込まれていく、多くのキルディリア兵。

しかも、あの落とし穴、相当深いみたいで。

一度落ちたら最後、誰一人這い上がれる者はいなかった。
 
さらさらと手の中を溢れる砂を、どうやって掴んでよじ登ることが出来ようか。

這い上がろうとする者達は、砂粒を握るばかりで。

それどころか、パニックになってもがけばもがくほど、より深みにハマっていくようだった。

…これはひでぇや。

「…いつの間に…。あんな落とし穴を…」

「徹夜して掘った」

と、何故かちょっと自慢げな令月。

令月さんがー夜なべしてー♪落とし穴掘ってくれたー♪…。…なんてな。

落とし穴なんて、非常に古典的な罠だ。

しかし、効果は抜群と言ったところか。

おまけに。

「ギャッ!!」

「うわっ!!」

用意されていたのは、落とし穴だけではない。

うっかり罠の仕掛けられた部分を、踏んづけてしまったのだろう。

地面から、先を尖らせた竹槍が勢いよく、ニュッ、と生えてきたり。

大きな石が、雨あられのように降り注いだり。

…この学院、罠まみれなんだけど。

さながら忍者屋敷である。

「いやー。ここまで見事にハマってくれると嬉しいねー」

「夜なべして罠を作った甲斐があったね」

元暗殺者組、ご満悦。

お前らは末恐ろしい奴だよ。

まさか、学院内にこんな仕掛けが施されているとは思わなかったのだろう。

大地震を起こして、混乱のうちに学院を制圧するつもりだったらしいキルディリア部隊は。

早速返り討ちに遭って、逆に自分達が混乱の渦に巻き込まれていた。

策士策に溺れる。ざまぁ。

お陰でこっちは、態勢を整えることが出来たよ。

「よしっ…。…カップ麺の恨み、ここで晴らしてやる」

ここから反撃の狼煙、って奴だ。