神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

その一方、無自覚リア充の無闇と月読ちゃんは。

「きゃ〜っ!揺れる〜助けて〜っ!」

「お前は浮いてるんだから、関係ないだろう」

月読ちゃんに抱きつかれてるっていうのに、相変わらず顔色一つ変えない無闇。

畜生、見せつけやがってよ。

「…」

思いっきり地面が揺れているのに、マシュリは少しも狼狽えることなく。

片手に食べかけのちゅちゅ〜るを持って、じっと窓の外を見つめていた。

ど…。…どうしたんだ?

「ま…マシュリ、どうした?お前も机の下に隠れ、」

「…始まった…!」

えっ?

同時に、室内の電気が全部、バチンッ、と音を立てて落ちた。

いきなり、部屋の中は真っ暗になった。

何だ、停電か?

地震が起きたんだから、停電するのは驚くべきことじゃない。

だけどこれって、なんかおかし、

「キルディリア魔王国軍だ…!」

窓の外を見つめていたマシュリが、俺達に向かってそう叫んだ。

…まさか。このタイミングで?

「何でっ…これ、地震…!」

「大地魔法ですかね」

ルイーシュの呟きで、俺は全てを理解した。

そうか。この地震は、自然現象じゃない。

大地魔法…。その名の通り、大地を操る魔法によって、人為的に起こされたもの。

恐らくは小規模なものだ。イーニシュフェルト魔導学院の敷地内だけを狙って起こした、魔法による地震。

成程、それなら良かった。

いや良くはないけど、それなら被害に遭ったのは俺達だけで、他のルーデュニア国民の皆さんは無事なんだろ?

それに、学院の敷地内だけとはいえ、さすがにこの規模の揺れを、そう長くは続けられないようで。

次第に、揺れは収まった。

死ぬかと思った…。まだ足元がフラフラする。

みんな、何とか無事に…と、思ったが。

「はぇぁ!?」

窓の外を見て、びっくり仰天。

大勢の「お客様」が、校門や、学院の外と中を隔てる柵を乗り越えて。

ぞろぞろと、こちらに迫ってこようとしているではないか。

いざ突入、と言わんばかりに。

「マジかよ…!本当に来やがった…!」

「うわぁ…。どうせなら、カップ麺を全部食べてから来て欲しかった…」

「言っとる場合か、ルイーシュ!」

迎撃。とにかく迎撃しないと。

突然大地震を起こして、こちらを混乱させる。

そして、その機に乗じて突入する。

なんて狡猾な作戦だ。人様の家を訪ねる時は、アポを取ってから行きなさい、って習わなかったのか?

新手の押し入り強盗かよ。

「この礼儀知らず共。蜂の巣にしてや…」

「ちょっと待って」

魔銃を召喚しようとしたら、令月にそれを止められた。

「は?何で?」

「いーから。しばらく、大人しく見ててよ」

すぐりまで。

「何の為に俺達が、学院中に罠を仕掛けたと思ってんの?…この時の為だよ」

と言って。

すぐりは、目に見えない透明な糸を、軽くちょいっ、と引っ張った。

途端。

こちらに突入しようとしていた、大勢のキルディリア兵達が。

次々に、その場にすってんころりんし始めた。

…は?