神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

「お前って奴は…5分も待てないのかよ」

「人生、そんなに長く待ってたら疲れますよ?」

何正論ぶってるんだ。お前。

要するに、我慢弱いだけだろ。

「それにほら、この後不測の事態が起きて、カップ麺を食べるどころじゃない事態に陥るかもしれない…」

「…んな訳ないだろ…」

「だったら、少々固くても、今のうちにこのカップ麺を味わっておく…。…その選択が正しかったと、後でそう思う日が来るかもしれない…」

「ねーわ」

「そんな訳なので、いただきまーす」

ずるずる。

あーあ…。待ちきれずに食べちゃった。

馬鹿だなぁ。

5分待て、って指示は、「この商品は、お湯を入れて5分経った頃が一番の食べ頃ですよ」っていう、メーカーからの大事なメッセージなんだよ。

それを無視して早々に食べ始めるなんて、これは、この味噌カレーしょうゆチゲラーメンへの冒涜。

俺は待つぞ。折角なら、一番美味しい状態で食べたいからな。

「…で、どう?美味い?」 

「うん。これは、かつて一度も食べたことのない味、」

と、ルイーシュが感想を述べた、その時。

「…!何か来る」

恍惚とちゅちゅ〜るを舐めていたマシュリが、顔を上げた。

同時に。

「っ、うわっ!?」

地面の奥深くから、ズンッ、と突き上げられているような振動が伝わってきた。 

地震だ。

そう気づくなり、俺はその場にしゃがみ込んだ。

「っ、あぶな、って、あっつ!?」

机の上が激しく揺れ、お湯が入っていたカップ麺が真っ逆さま。

幸い、俺には直撃しなかった。

でも、床に溢れたお湯が少しハネて、俺の顔を濡らした。

火傷するほどではなかったが、それ以上に俺がショックだったのは。

折角のカップ麺を、ひとくちも食べないまま床にぶち撒けられてしまったことである。

馬鹿正直に、ちゃんと5分待とうとしたばかりに。

こんなことなら、ルイーシュみたいに待たずに食べ始めれば良かった。

正直者が馬鹿を見る。そんな世の中で良いのかよ。ひでぇ。

「全く…。こんな時に地震とは。面倒ですね」

イレースちゃんは、自分の机の下に潜りながらも。

手にしていた書類は決して手放さず、揺れながら仕事を続けていた。

すげぇ。社畜の鑑。

一方。

「いたたたた…。いきなり揺れるもんだから、からあげ棒が喉を貫通しちゃいましたよ。不死身じゃなかったら死んでましたね」

「ナジュ君ーっ!!大丈夫!?」

からあげ棒の先端が、うなじの辺りから飛び出しているというのに、ヘラヘラしているナジュと。

そんなナジュを見て、青ざめている天音。

軽くグロ映像なんだけど。早くその棒抜いてくんね?

更に、その一方。

「おっと、危ない危ない。大事な糠漬けをひっくり返すところだったよー」

「危なかったね」

とか言いながら、元暗殺者二人は、何事もなかったようにおにぎりを食べ続けていた。

落っことさないように、糠漬けのタッパーをしっかり抱いて。

お前らは…。…将来大物になるよ。