珍しく。
ナジュの顔は真剣そのもの…と、言うより。
非常に…思い詰めたような表情だった。
なんで、と一瞬考えたが。
その理由に真っ先に気づいたのは、俺よりも、ナジュの親友である天音だった。
「…!ナジュ君…その事は…」
「…良いんですよ。僕が徴兵されて、戦わされていたのは事実ですから」
その台詞で、天音が言わんとしていることに気づいた。
…そうか。…そうだったな。
ナジュは…生まれ故郷で、魔導師と人間の泥沼の戦いに巻き込まれて…。
まだ幼い頃から、召喚魔導師であるというだけで徴用され。
その大義も分からぬまま、過酷な戦いに巻き込まれた…。
そしてそのせいで…ナジュにとって、もっとも大切な存在だったリリスを…。
「僕にとっては思い出したくない記憶です。…でも、それだけに…。…キルディリア魔王国が、どうしてアーリヤット皇国を侵略したのか、分かる気がします」
「…憎んでるからか?魔導師が、非魔導師のことを…」
「決して分かり合うことは出来ません。魔導適性がないというだけで、それは最早人間ではないんですから」
「…そうか」
なんでそんな発想になるのか、俺だって魔導師だけど、全然分からないよ。
魔導師だって、非魔導師だって、同じ人間じゃないか。
魔法が使えるかどうかなんて関係ない。
俺にとっては、逆上がりか出来るか出来ないか、くらいの差。
だけど、キルディリアの魔導師達にとっては、非魔導師は犬畜生にも劣る存在。
キルディリアの悲しい歴史が、国民達にそんな歪んだ認識を植え付けてしまったのだ。
「でも、キルディリア魔王国にも、魔導適性がない国民はいるはずでしょ」
と、令月が言った。
「僕みたいに、中途半端な魔導適性しかない人だって。その人達はどうなるの?逆島流し?」
「い、いや。それはさすがに…」
大昔、キルディリア魔王国が建国された時、島にいたのは島流しされた魔導師だけだったはずだ。
しかし、今や幾世代も経て、人々は子供を増やし、その子供がまた大きくなって子供を産み…。
国民の数は、建国時のそれとは比べ物にならないほど増えている。
そうすると今度は、魔導適性に恵まれない子供も生まれてくるはずだ。
魔導適性の有無は先天的なものであり、生まれた子に魔導適性があるか否かは、見た目には分からない。
その子がある程度大きくなって、初めて分かることだ。
魔導適性の有無は、遺伝による影響が大きいとされているが、実際のところは不明である。
両親共に魔導師でも、その子供に魔導適性がないこともあるし。
両親共に非魔導師でも、生まれた子に魔導適性がある場合もある。
兄弟間でも、上の子には魔導適性があるけど、下の子にはない、ということも有り得るし。
生まれた子が双子でも、片方は魔導適性があって、もう片方にはない、というケースもあるそうだ。
この分野の研究はまだまだ発展の余地ありで、詳しいことは分かっていない。
遺伝の要素が大きいことは分かっているが、遺伝だけでは説明がつかない。
つまり。
いくら魔導師が建国し、魔導師の国民が多いキルディリア魔王国でも。
魔導適性を持たない、一般人である国民も、一定数存在するはずなのだ。
こればかりは、どうすることも出来ない。
魔導師になれる子もいれば、魔導師になれない子もいる。これは本人に過失がある訳ではない。
結婚し、子孫を残し、世代を紡いでいく人間の営みの中で、どうしても発生する自然現象のようなものなのだ。
ナジュの顔は真剣そのもの…と、言うより。
非常に…思い詰めたような表情だった。
なんで、と一瞬考えたが。
その理由に真っ先に気づいたのは、俺よりも、ナジュの親友である天音だった。
「…!ナジュ君…その事は…」
「…良いんですよ。僕が徴兵されて、戦わされていたのは事実ですから」
その台詞で、天音が言わんとしていることに気づいた。
…そうか。…そうだったな。
ナジュは…生まれ故郷で、魔導師と人間の泥沼の戦いに巻き込まれて…。
まだ幼い頃から、召喚魔導師であるというだけで徴用され。
その大義も分からぬまま、過酷な戦いに巻き込まれた…。
そしてそのせいで…ナジュにとって、もっとも大切な存在だったリリスを…。
「僕にとっては思い出したくない記憶です。…でも、それだけに…。…キルディリア魔王国が、どうしてアーリヤット皇国を侵略したのか、分かる気がします」
「…憎んでるからか?魔導師が、非魔導師のことを…」
「決して分かり合うことは出来ません。魔導適性がないというだけで、それは最早人間ではないんですから」
「…そうか」
なんでそんな発想になるのか、俺だって魔導師だけど、全然分からないよ。
魔導師だって、非魔導師だって、同じ人間じゃないか。
魔法が使えるかどうかなんて関係ない。
俺にとっては、逆上がりか出来るか出来ないか、くらいの差。
だけど、キルディリアの魔導師達にとっては、非魔導師は犬畜生にも劣る存在。
キルディリアの悲しい歴史が、国民達にそんな歪んだ認識を植え付けてしまったのだ。
「でも、キルディリア魔王国にも、魔導適性がない国民はいるはずでしょ」
と、令月が言った。
「僕みたいに、中途半端な魔導適性しかない人だって。その人達はどうなるの?逆島流し?」
「い、いや。それはさすがに…」
大昔、キルディリア魔王国が建国された時、島にいたのは島流しされた魔導師だけだったはずだ。
しかし、今や幾世代も経て、人々は子供を増やし、その子供がまた大きくなって子供を産み…。
国民の数は、建国時のそれとは比べ物にならないほど増えている。
そうすると今度は、魔導適性に恵まれない子供も生まれてくるはずだ。
魔導適性の有無は先天的なものであり、生まれた子に魔導適性があるか否かは、見た目には分からない。
その子がある程度大きくなって、初めて分かることだ。
魔導適性の有無は、遺伝による影響が大きいとされているが、実際のところは不明である。
両親共に魔導師でも、その子供に魔導適性がないこともあるし。
両親共に非魔導師でも、生まれた子に魔導適性がある場合もある。
兄弟間でも、上の子には魔導適性があるけど、下の子にはない、ということも有り得るし。
生まれた子が双子でも、片方は魔導適性があって、もう片方にはない、というケースもあるそうだ。
この分野の研究はまだまだ発展の余地ありで、詳しいことは分かっていない。
遺伝の要素が大きいことは分かっているが、遺伝だけでは説明がつかない。
つまり。
いくら魔導師が建国し、魔導師の国民が多いキルディリア魔王国でも。
魔導適性を持たない、一般人である国民も、一定数存在するはずなのだ。
こればかりは、どうすることも出来ない。
魔導師になれる子もいれば、魔導師になれない子もいる。これは本人に過失がある訳ではない。
結婚し、子孫を残し、世代を紡いでいく人間の営みの中で、どうしても発生する自然現象のようなものなのだ。


