神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

天音とナジュも、マシュリも、今日は朝から出かけていた。

きっと、夕方になるまで戻ってこないと思っていたのに…。

「天音君、ナジュ君…。実は今…」

「事情は聞いてますよ。キルディリア魔王国に最後通牒を出されたんでしょう?」

えっ…。

「知ってたのか?ナジュ…」

「さっきまでは知らなかったんですが、出掛けた先で、通行人の心を読んで知ったんです」

あぁ…そういうことか。

キルディリア魔王国に最後通牒を提示されたことは、既にニュース速報で国民達に知られている。

偶然、そのニュースを聴いた人の心を読んで、ナジュが事情を知り。

それを天音に伝えて、二人共急いで戻ってきたんだな。

「…マシュリは?何処で?」

「ネコミュニティのみんなが教えてくれたんだ」

「そ、そうか…」

凄いな。猫の仲間達。

さすが情報が早い。

「僕に出来ることがあるなら、何でも手伝うよ」

と、マシュリ。

「この国を守ることは、僕の居場所を…家を守ることだから。家を守る為なら、僕は何でもやる」

「…ありがとう」

マシュリにそう言ってもらえると、とても心強いよ。

「僕も…戦うのは苦手だけど、後方支援とか、怪我人の治療とか…出来ることがあるならやるよ」

天音まで。

「助かるよ。天音の回復魔法は、聖魔騎士団でも随一だもんな」

「いやぁ。回復魔法だけじゃなくて、剣術の方も、もごもごもご」

「あー!あー!何でもない!ナジュ君、何でもないよね!」

天音は必死に、ナジュの口を塞いで黙らせていた。

何やってんだ…?

すると。

「キルディリアの女王を殺すんじゃ駄目なの?」

背後から、突然気配もなく声がして。

振り返ると、そこに令月とすぐりがいた。

二人共、既に仕事着…いつもの黒装束姿だった。

お前ら…。姿が見えないとは思ってたが、やっぱり俺達の話を聞いてたんだな。

そうだろうと思った。

「頭を叩けば、大抵の争い事は解決するよ。キルディリア魔王国に潜入してさー、その女王ってヤツを、俺と『八千代』で殺してきてあげるよ」

すぐりの言葉は、冗談でも何でもなかった。

本気なのだ。

本気で、イシュメル女王暗殺を問題解決の手段として考えている。

ある意味で、誰よりも肝が据わっている。

いかにも元暗殺者らしい考え方だが…。

「それは駄目だ。あまりに危険過ぎる」

「僕達が失敗しても、所詮、失う命は二つだけだよ」

何言ってるんだ。

その二つの命が、俺達にとってどれほど大切なことか。

「僕達の命を惜しむばかりに、無関係の国民が、何十、何百と死んでも良いの?」

「そ…そういうことを言ってる訳じゃ…!」

「…無駄ですよ、いくら頭を叩いても」

静かな声で言ったのは、ナジュだった。

…え?