神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

それに、イレースだけではなく。

「学院長先生、羽久さん。よく聞いてください」

シュニィが、俺とシルナを真っ直ぐに見て言った。

「私は…いえ、私達は決して、あなた方をキルディリア魔王国に売り払ったりしません。これは、聖魔騎士団の総意です」

「シュニィ…」

「あなた方は聖魔騎士団の仲間であり、私達にとって精神的な柱でもあります。私達は、自らの居場所である聖魔騎士団を守る為に、あなた方を守ります」

きっぱりと、はっきりと。

シュニィは、そう言い切った。

更に、無闇も。

「どうせ、お前達がいなくなれば聖魔騎士団は骨抜きも同然だ。特にシルナ・エインリー。お前という存在は、この国において絶対に必要不可欠だ」

「…無闇君…」

「それに、お前達を引き渡したからと言って、キルディリアが大人しく手を引くとも限らない」

…確かに。

シルナを手に入れたが最後、最早用済みとばかりに、改めてルーデュニア聖王国に攻め込んでくるかもしれない。

やりかねない。あのイシュメル女王なら。

「でも、君達、そのキルディリア魔王国っていうのと戦って、勝てるの?」

無闇の背後に、ふわりと舞い降りた女性がそう聞いた。

無闇の持つ『死火』の化身、月読である。

…結構痛いところ突いてくるな。

「もちろん、私と無闇君は負けるつもりないけど」

「倒す必要はない。思い知らせて、追い返せば良いだけだ」

追い返す…か。

その通りだけど、果たしてそれが上手く行くかどうか。

「こちらは攻め込まれる側なんです。それが不利なんですよ」

と、イレース。

…うん。

「私達が守らなければならないのは、このポンコツパンダだけじゃない。ルーデュニア聖王国の民と国土を守らなきゃいけないんです」

その通り。

無関係のルーデュニア聖王国の国民を巻き込む訳にはいかないのだ。…絶対に。

「…イレースちゃんが私に失礼なことを言ってる…」

良いから、シルナ。

「ルーデュニア聖王国の民を守りつつ、シルナのことも守る…か」

「ですから聖魔騎士団では、作戦を考えています。キルディリア魔王国軍の侵攻を許さず、何としても水際で押し留める為に、国境で守りを固め…」

シュニィが、考えている作戦を口にした…。

…その時。

「ごめんなさい、皆さん。戻りましたっ…」

「ヒーローは遅れてやって来る、ってね」

出掛けていた天音とナジュが、学院に戻ってきた。

誰がヒーローだって?ナジュ。

それから。

「ごめん、遅くなった」

窓から、しゅたっ、と猫が一匹入ってきた。

無論、マシュリである。

良かった。これでみんな、揃ったな。