「…で、今何処に向かってるんです?」

えっ?…そうだな…。

「今日の目的は?」

「うーん…。実は、特に決めてた訳じゃないんだけど…」

「ノープランだったんですか」

ぎくっ。

だ、だって。「たまにはナジュ君と出掛けたいなぁ」とは思ってたけど。

行き先なんて、別に何処でも良かったから。

何処に行っても楽しいでしょ?友達と一緒に出掛けたら。

「な、ナジュ君は何処に行きたい?今日はナジュ君のリクエストに任せるよ」

「ふむ、言いましたね?」

…え?

ナジュ君は、何故か先程と同じ。

にやり、と人の悪い笑みを浮かべていた。

「じゃ、今日は僕の行きたいところに付き合ってもらいますよ。…それで良いんですよね?」

「え?う、うん。い、良いよ…?」

あれ。

僕、もしかして墓穴掘った?

これは嘘でも、行きたい場所を挙げた方が良かったのだろうか。

今からでも遅くないか?

「あ、あの、ナジュ君。僕やっぱり、ショッピングに、」

「よーし。それじゃ、行きましょうかー」

「ちょ、ナジュ君。何処行くの?待って、ちょっと待ってー!」

聞こえなかったフリをしないで。お願い。

早足で歩いていくナジュ君に遅れないように、僕は急いで、その後ろをついて行った。







…で、ナジュ君が足を止めたのは。

「よし、ここにしましょう」

「…ここって…。…映画館?」

「御名答」

…映画館…か。

…意外と普通の場所で助かった。

「意外とって何ですか?」

「あ、い、いや何でもない」

もっと変なところに連れて行かれるのかと思ったよ。映画館なら…。

…なんて、思っていた僕は甘かった。