ーーーーー…その頃。

冬休みに入ったので、今日は学院を出て、王都セレーナに遊びに出かけた僕と、ナジュ君はと言うと…。




「それにしても天音さん。あなたも物好きな人ですね」

「え、何が?」

大通りを歩きながら、ナジュ君が唐突に言った。

「だって、いきなり僕と一緒に出かけたい、なんて」

「別に…特別な意味なんてないよ。たまには、誰かと遊びに行きたいなぁって思っただけで」

生徒達も冬休みを迎えて、それぞれ帰省したことだし。

僕達教員にも、一日二日くらい、仕事を休んで遊びに行く時間くらい…。…あっても良いでしょ?

「果たして、その理屈がイレースさんに通用するかどうか…」

「うっ…。さ、さすがに一日くらいは許してくれるよ…」

「そうだと良いですけど」

ちょ、こ、怖がらせるようなことを言わないでよ。

するとナジュ君は、そんな僕の心の中を覗いたらしく。

にやり、と人の悪い笑みを浮かべた。

「帰ったら、イレースさんに言われるんじゃないですか?」

「な、何を?」

「『あら。どなたですかあなた達は。我が校には、生徒が冬休みだからって、呑気に遊びに行くような教員はいませんよ。不審者なら帰ってください』とか…」

「うわぁぁぁ…。想像しちゃうからやめて…」

ナジュ君の声真似、妙に似てるから余計に怖くなる。

だ、大丈夫だよ。ちゃんとイレースさんにも、「今日はナジュ君と出掛けてきます」って言ってから来たから。

怒られるようなことはない…と、思う。多分。

「ふふふ」

…ナジュ君。ニヤニヤするのやめて。

…まったくもう…。

「…で、話を戻しますけど」

「え?」

「どうせ出掛けるなら、羽久さんとかマシュリさんとか、別の人を誘えば良かったのに」

「?何で?ナジュ君、嫌だった?」

「嫌な訳じゃないですけど…」

…けど?

「…むしろ、天音さんは嫌じゃないんですか?」

「え?」

「僕みたいなのと出掛けるの。つまんなくないんです?」

「友達と一緒にお出掛けするのに、つまらないなんてことないよ」

そんなこと考えてたの、ナジュ君は。

「一緒に来てくれてありがとう、ナジュ君」

「…ふーん…。…まぁ、良いですけど」

…まったくもう。相変わらず、素直じゃないんだから。