「あなた達。何をやってるんです?」

「ツキナが家に帰ってる間、園芸部の畑は俺と『八千代』が任されてるからさー」

「冬野菜の手入れ、しなきゃいけないんだ」

百姓仕事に休みは無し、ってね。

…いや、休めよ。

「それに、今の時期に畑の寒起こしをしておきたいしねー」

寒起こし…?な、何それ?農業用語?

「ツキナが頑張って育ててるカブも、段々大きくなってきたもんねー」

「うん。『大きなカブ』までもうすぐだね」

お前らは一体、何を目指してるんだ?

「それに、来年使う堆肥の準備もしておかないと。百姓は忙しくて大変だなー」

「そうだね」

お前らの本業は学生だって、断じて百姓ではない。はずなのに。

堆肥から自分で作るとは。やっぱりお前達、農業学校に(ry。

「あなた達。野良仕事も結構ですが、冬休みの宿題はしっかりやってもらいますよ」

と、釘を刺すことも忘れないイレースである。

「りょーかーい。それじゃーねー」

「またね」

すぐりと令月は、来た時と同じように、窓からひょいっと出ていった。

…普通に出ていけよ。ドアから。

いちいち、俺とシルナをビビらせるな。

「まったく…。冬休みだからって、浮かれた輩が多過ぎます」

「…そういえば、天音とナジュはどうした?」
 
今日、姿が見えないんだが。

「朝から二人で出掛けましたよ。街に息抜きに行くそうです」

「あ…そうなんだ」

へぇ。仲の良いことで。

何処行ったんだろうなぁ。

生徒達が休んでるんだから、教師だってちょっとくらい休んでも良い…。…よ、なぁ?

「…それじゃ、マシュリは?生徒がいないから、マシュリも…」

学院に取り残されて、寂しい思いしてるんじゃないかと思いきや。

「彼も出かけてますよ」

「え、何処に?」

「朝から中庭で、にゃーにゃーと何匹もの野良猫が騒いでいるから、定規で叩いて追い払おうとしたんですが…」

おい、やめろって。動物虐待反対。

「どうも、マシュリさんの友達だったそうです。今日は一日、野良猫仲間と遊びに出かけるそうです」

「…ふーん…」

あいつ、俺より友達多いんじゃね?

…猫友だけど。

「ちっ…。まったく、猫いらずでも撒いといてやりましょうかね…」

とかブツブツ言いながら、イレースは学院長室を出ていった。

…猫いらずはやめてやれって。マシュリが泣くぞ。

「…だってさ。暇なのはシルナ、俺とお前だけなんだってさ」

「ひ、暇じゃないよぅ!生徒達が帰ってきた時の為に、お菓子の補充を…」

またイレースに怒られても知らないからな。

俺は怒られない為に、せめて三学期の授業の準備を、入念にやっておこう…。