神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

「魔法が使えないからって、そんな…。不当に人を傷つけるなんて…」

「不当じゃないんでしょう、彼らにとっては」

…え?

魔導師を差別するなんて酷い、という雰囲気に、一石を投じたのは。

珍しく、真面目な顔をしたナジュだった。

「ナジュ…君?」

「天音さん。それに皆さんも。あなた方の批判を覚悟で言いますが…。…正直、僕にはキルディリア魔導師達の気持ちが理解出来ます」

「えっ…?」

…魔導師を差別するというその行為を、肯定すると言うのか?

何で…。

「羽久さん、肯定している訳じゃありません。ただ理解出来るってだけです」

「え、あ…ご、ごめん」

「…いえ、でもそう思われても仕方ありませんよね」

すると。

「…僕も、その意見に賛成」

マシュリまでもが、ナジュの意見に賛成した。

このふたりの意見が一致するとは。珍しい。

「どうして…」

「…半分人間の血が入ってるのに、君達以外の者は誰も、僕を人間だと認めなかった」

「…!」

マシュリの言葉に、俺はハッとした。

「そういうものだよ。人間っていうのは…少しでも自分と違うものを異質とみなして、排除する生き物なんだ。…そこに善意も悪意もない」

「…マシュリ…」

「…僕も似たような理由ですね。…魔導師と非魔導師の戦争に参加させられて、嫌と言うほど思い知ったので」

…そうか、ナジュも。

「あなたも分かるんじゃないですか。アルデン人であるあなたなら」

「…」

ナジュに問われて、シュニィも言葉に詰まった。

…そう、だったな。

シュニィも、昔は…自分が少数民族の出身であることに、酷いコンプレックスを抱いていた。

「その人が優しいとか、親切だとか、そんなことは関係ない。…魔導師じゃないってだけで、彼らにとってはそれだけで、攻撃対象なんです」

「…」

「むしろ、遠慮なく踏みつけられるものがあるから、努力しようと思える。他者を傷つけることでしか、自分の価値を見出だせない…。…虚しいですけど、人間って所詮、そういう生き物ですから」 

…ナジュが言うと、説得力が違うな。

実際に、魔導師と非魔導師の戦争に巻き込まれた、ナジュが言うと…。

何と言って良いのか分からなくて、しばし黙ってしまったが…。

沈黙を破ったのは、シルナだった。

「君の言うことはもっともだよ。マシュリ君、それにナジュ君も」

「はい」

「だけど、それは人を傷つけて良い理由にはならないんだ」

…。…シルナ…。

「だから私は、キルディリア魔王国のやり方を否定する。私が戦争に協力することは絶対に有り得ない。あの国に亡命することも絶対にしない」

「学院長先生…」

「…君なら、そう言うと思ってたよ」

シュニィと、そしてマシュリが言った。

…そうだな。シルナの言う通りだ。