神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

すると。

「それにしても、酷い国だねー。ある意味、ジャマ王国より酷くない?」

「『八千歳』はともかく、僕だったら『青カード』扱いだったかもしれないね」

元暗殺者組のすぐりと令月が、そう口にした。

…令月、お前も一応、偏ってはいるが魔法が使えるんだから、ちゃんと魔導師として…。

…いや、でも、分からない。

あの国ならやりかねない。そう思わせてくるのが恐ろしい。

「魔導師じゃない人に、そんな酷い差別を…。…どうして?魔導師じゃないってだけで…お店やホテルに入れてもらえないなんて…」

誰よりも優しい天音は、俺達の見聞きしたことが信じられないようだった。

…ちなみに、魔導師じゃない子供を国外に追放した、という…あの光景を見てしまった、という話はしなかった。

あまりに悲惨な気分にさせられるし…。それに何より、この場にシュニィがいるからだ。

小さな女の子が、母親から引き離されて、連れて行かれた…。

そんな話をシュニィにしたら、きっと、誰よりも傷つくに違いなかった。

だから、彼女の前ではどうしても言えなかった。

シルナも同様だったのだろう。その話だけは、暗黙の了解で避けていた。

…まぁ、ナジュは既に察してると思うが。

「キルディリア魔王国が、そんな酷い差別をしているなんて…。…知りませんでした」

「うん…。魔導師が優勢な国だとは知ってたけど…」

「…馬鹿馬鹿しい」

イレースは、忌々しそうにそう吐き捨てた。

「魔導師だろうと馬鹿はいるし、非魔導師だろうと話の分かる者はいます」

「…イレース…」

その通りだよ、イレース。

その言葉、イシュメル女王に言ってやってくれ。

「実際、私の知り合いにもいますよ。優れた魔法が使えるけれど、見た目も中身も怠惰なパンダみたいな魔導師が」

「…ねぇ。イレースちゃん…。その知り合いって、私のことじゃないよね…?」

シルナ、遠い目。

「それに、悪趣味な読心魔法を乱用する魔導師もいますね。あんなものに特権階級を与えようなど、身分違いにも程があります」

「うわー、実質名指し。傷つきますね〜」

…ナジュのことだな。間違いなく。

すると。

「魔法は使えるけど、俺みたいにさー。毒魔法とか糸魔法とか、人を殺すしか能のない魔導師もいるけど」

と、すぐりは半笑いで言った。

「そーゆー奴は、どーゆー扱いになるんだろうね?魔法使えない人なんかより、よっぽど酷いクズだと思うけど」

「すぐり…。…そんなことは…」

自虐が過ぎるぞ。お前はクズなんかじゃ…。

「…魔法が使えるかどうかなんて、関係ありません」

シュニィが静かに言った。

「魔法が使えなくても…。優しい人、親切な人、明るい人…。たくさん素晴らしい人がいます。私はそのことを知っています」

「…シュニィ…」

そうだよな。

実際シュニィの夫…アトラスも、非魔導師だ。

だけど、二人がどれほど愛し合って、互いを大切に思っているか。

そんなこと、わざわざ確かめるまでもない、誰もが知っている事実だ。