神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

もう、このまま誰も俺達の話、聞いてくれないんじゃないかなぁと思ったが。

放課後、補習授業を終えた後。

「学院長先生っ…。羽久さん…!」

「お…。…シュニィじゃないか」

職員室で、必死に書類整理に追われているところに。

聖魔騎士団副団長のシュニィが、慌てて駆け込んできた。

シュニィも久し振りだな。

シュニィは、俺とシルナの姿を見るなり。

「…良かった…!お二人共、無事で…」

涙目になりながら、喜んでくれた。

シュニィ…。お前も優しくて良い奴だ。

イレースとは大違い、

「イレースさん。羽久さんがイレースさんのことを鬼だって」

「何ですって?」

ナジュの告げ口に、ギロッ、とこちらを睨むイレース。

ひっ。

「馬鹿、ナジュ。勝手なこと言うんじゃねぇ」

つーか、鬼とは言ってないだろ。

ったく…。

「シュニィちゃん…」

「お帰りなさい、学院長先生。羽久さん」

ありがとう。

「でも…どうして、俺達が帰ってきたことをシュニィが知って…」

「僕が教えたんだよ」

シュニィの後ろから、しゅたっ、と一匹の猫が床に降り立った。

いろり…マシュリである。

「はい。マシュリさんが猫の姿で、聖魔騎士団魔導隊舎にいらっしゃって…。学院長先生方が帰ってきたと、教えてくれたんです」

成程、そういうことだったが…。

良い仕事するなぁ、マシュリ…。

「なかなか戻ってこられないから、ずっと心配してたんです…。もしかして、キルディリア魔王国で不測の事態に陥ったんじゃないかって…」

「…」

「フユリ様も、同じように心配なさってたんです。フユリ様がサミットの最中、ミナミノ共和国に閉じ込められたようにでも、学院長先生達も、キルディリア魔王国に軟禁されてるんじゃないかと思って」

「…」

俺とシルナは、互いに顔を見合わせた。

「だけど、そうじゃなかったんですね。良かっ…」

「いやぁ…。…どうやら、事態はそんなに簡単には運ばなかったみたいですよ」

「えっ?」

沈黙していた俺とシルナに代わり。

俺達の心をいち早く読んで、事情を察したナジュが、そう言った。

「むしろ、とても難しいことになってるみたいですね」

「…あぁ、そうだな」

ナジュ相手に隠し事は出来ない。

それに、そもそも仲間達に隠し事をするつもりもない。
 
「…話しにくいなら、僕が代わりに話しましょうか?」

と、ナジュが申し出てくれたが。

「いや…自分達で話すよ。聞いてくれるか」

「分かりました」

もとより、そのつもりだったのだから。

俺とシルナは、キルディリア魔王国に辿り着いてから、昨日帰ってくるまでの経緯を説明した。