神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

「な、何?イレースさん…」

「勝手に決められては困ります。ただでさえ、なかなか帰ってこないせいで、授業計画が滞っているというのに」

「うぐっ…」

…それを言われると痛い。

結局一ヶ月以上、授業を空けてしまって。

その間、イレース達が補講をしてくれたのは分かっているが。

やはり自分の担当科目ではない為、完璧にという訳にはいかない。

「すぐに復帰してもらわなくては。生徒達が実家に帰る前に」

「…え?」

シルナ、きょとん。

俺もイレースに言われるまで、すっかり忘れていた。

「実家…。…帰るって?何で?」

「何でじゃないでしょう。来週には、もう冬休みに入るんですから」

「…!」

…そうだった。

二学期の修了式は、もう来週に迫っている。

冬休みに入ったら、令月とすぐり以外の生徒は、まとめて実家に帰ってしまう。

「そ、そんな…!帰ってきたら、生徒達と一緒に楽しくチョコパーティーしようと思ってたのに…!」

シルナ…。お前、そんなこと考えてたのか…。

「チョコなんか食べてる場合ではありません」

「チョコ『なんか』!?」

イレースにとっては「なんか」なんだよ。

「ここは冬休みを短縮して、授業に当てたいところですが…」

「うわぁ。イレースさん、さすが。生徒が楽しみにしてる冬休みを削るなんて、考えることが相変わらず鬼…」

「…何か言いましたか?」

ギロッ、とナジュを睨むイレース。

おいやめろって。イレース相手に。

「…って、天音さんが言ってました」

「えぇっ!?」

天音、とばっちり。

…なんて、こんないつものやり取りが、今は堪らなく愛しく思えるよ。

「生徒達も帰省の予定を立ててますからね。さすがに、冬休みは短縮出来ません」

「生徒達、いなくなるのか…。ちょっと寂しいね」

と、マシュリ。

普段、マシュリ…いろり…を可愛がってくれてる生徒達も、みんな帰っちゃうわけだからな。

「ちょっとどころじゃないよ!みんなでチョコパーティーしたかったのにぃぃ」

「そんなことしてる場合ではありません。さっさと補習授業の予定を立てますよ」

シルナの意見、完全無視。

「冬休みを迎える前に、少しでも遅れを取り戻しておかなくては」

テキパキと、早速補習授業の予定を立てるイレース。

仕事が早い。

「…ねぇ、それよりも…。キルディリア魔王国で、学院長先生達に何があったのかを聞くのが先じゃないの…?」

恐る恐るといった風に、天音がそう言った。

…天音、お前は本当に良い奴だな。

しかし。

「そんなものは後回しです」

鬼教官に、そんな理屈は通用しない。

「…えぇぇ…」

「補習授業が終わったら聞いてあげますよ。それまでに要約して、話をまとめておいてくださいね」

…イレース。

相変わらず血も涙もないが。

…もう、何も言うまい。無事に帰ってこられて良かったってことで。