キルディリア魔王国、ファニレス王宮の王の間にて。
「これは何の騒ぎじゃ。サクメよ」
「申し訳ありません、陛下…。賊が城に侵入したようです」
「賊、じゃと?」
自慢のなんちゃってクリスタル王宮に、不穏分子が紛れ込んだと聞き。
イシュメル女王は、露骨に顔をしかめた。
「どういうことじゃ。説明せよ」
「はい。どうやら、王宮の裏庭にある、古井戸の隠し通路を使われたようで」
「…」
「付近を捜索すると、生け垣に、夜間警備に当たっていた兵が一人、気絶していました。彼に事情を聞くと、男女の二人組が入り込んだと…」
「それで?」
「殺すと脅されて、隠し通路の場所を教えてしまったようです」
サクメがそう答えると、女王はますます眉間にシワを寄せた。
その口元は、いつもの扇によって隠されていたが。
女王が酷く不機嫌であることは、誰の目から見ても明らかだった。
女王が不機嫌になっているのを見て、周囲の側近達も青ざめた。
そんな中サクメだけは、何とか平静を装いつつ、報告を続けた。
「そこから客室に入り込み、シルナ・エインリーと羽久・グラスフィアを脱走させたようです」
「追跡は?」
「行っています。国境検問所をすべて封鎖し、出国予定だった全ての公共交通機関を止めたのですが…。…未だに、逃げた二人の行方は掴めていません」
実は、俺とシルナが出国した後、タッチの差で、キルディリアから出国する船は全部、止められていたのである。
もう少し遅れれば、俺達も危なかった。
最初、賊が侵入したのは、物盗り目的だと思われていた。
しかし、朝になって騒ぎが収まって、サクメがいつものように客室を訪ねると。
そこはもぬけの殻で、暖炉の隠し通路が使われた形跡が残されていた。
その時点で初めて、賊の目的が、俺とシルナを連れ去ることだと発覚したのだ。
慌てて、全ての国境検問所を押さえたが。
その時はもう、俺とシルナは、まんまと出国した後だった。
時既に遅し、だった訳だ。
「目撃情報なども募っていますが…。今のところ、目ぼしいものは何も…」
「…」
「…ですが、ご安心ください。陛下。必ずや、逃げた二人を捕まえてご覧に…」
「…無駄じゃな」
「え?」
本当はシディ・サクメも、俺達を捕まえる自信なんてなかったはずだ。
だが、イシュメル女王の機嫌取りの為に、必ず捕まえると豪語してみせたが。
それはむしろ、余計に女王の機嫌を損ねる発言となった。
「その賊とやらは恐らく、奴らの手の内の者じゃろう。この王宮を出さえすれば、いくらでも逃げられるし、いくらでも隠れられるわ」
「し、しかし…」
「奴はイーニシュフェルトの里の賢者ぞ。追跡など無駄じゃ。我らが手をこまねいている間に、とっくにこの国を出ておろうよ」
「…」
さすがのサクメも、最早言い返すことが出来なかった。
認めざるを得ない。今更だが。
監視が甘かった、と。
「これは何の騒ぎじゃ。サクメよ」
「申し訳ありません、陛下…。賊が城に侵入したようです」
「賊、じゃと?」
自慢のなんちゃってクリスタル王宮に、不穏分子が紛れ込んだと聞き。
イシュメル女王は、露骨に顔をしかめた。
「どういうことじゃ。説明せよ」
「はい。どうやら、王宮の裏庭にある、古井戸の隠し通路を使われたようで」
「…」
「付近を捜索すると、生け垣に、夜間警備に当たっていた兵が一人、気絶していました。彼に事情を聞くと、男女の二人組が入り込んだと…」
「それで?」
「殺すと脅されて、隠し通路の場所を教えてしまったようです」
サクメがそう答えると、女王はますます眉間にシワを寄せた。
その口元は、いつもの扇によって隠されていたが。
女王が酷く不機嫌であることは、誰の目から見ても明らかだった。
女王が不機嫌になっているのを見て、周囲の側近達も青ざめた。
そんな中サクメだけは、何とか平静を装いつつ、報告を続けた。
「そこから客室に入り込み、シルナ・エインリーと羽久・グラスフィアを脱走させたようです」
「追跡は?」
「行っています。国境検問所をすべて封鎖し、出国予定だった全ての公共交通機関を止めたのですが…。…未だに、逃げた二人の行方は掴めていません」
実は、俺とシルナが出国した後、タッチの差で、キルディリアから出国する船は全部、止められていたのである。
もう少し遅れれば、俺達も危なかった。
最初、賊が侵入したのは、物盗り目的だと思われていた。
しかし、朝になって騒ぎが収まって、サクメがいつものように客室を訪ねると。
そこはもぬけの殻で、暖炉の隠し通路が使われた形跡が残されていた。
その時点で初めて、賊の目的が、俺とシルナを連れ去ることだと発覚したのだ。
慌てて、全ての国境検問所を押さえたが。
その時はもう、俺とシルナは、まんまと出国した後だった。
時既に遅し、だった訳だ。
「目撃情報なども募っていますが…。今のところ、目ぼしいものは何も…」
「…」
「…ですが、ご安心ください。陛下。必ずや、逃げた二人を捕まえてご覧に…」
「…無駄じゃな」
「え?」
本当はシディ・サクメも、俺達を捕まえる自信なんてなかったはずだ。
だが、イシュメル女王の機嫌取りの為に、必ず捕まえると豪語してみせたが。
それはむしろ、余計に女王の機嫌を損ねる発言となった。
「その賊とやらは恐らく、奴らの手の内の者じゃろう。この王宮を出さえすれば、いくらでも逃げられるし、いくらでも隠れられるわ」
「し、しかし…」
「奴はイーニシュフェルトの里の賢者ぞ。追跡など無駄じゃ。我らが手をこまねいている間に、とっくにこの国を出ておろうよ」
「…」
さすがのサクメも、最早言い返すことが出来なかった。
認めざるを得ない。今更だが。
監視が甘かった、と。


