神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

…すると、ジュリスが。

「おっと、そうだった。その前に…nllusioi」

「え?」

ジュリスは俺とシルナに、それぞれ何やら魔法をかけてくれた。

「…何だ?」

「お前達に幻覚魔法をかけた。これで、お前らは二人共完全に別人に見られてるはずだ」

…あ。

何のことはない。ジュリスは、このファニレス王宮にかけられている魔法と、同じことをしたのだ。

俺とシルナは、互いに新聞の写真に載ってしまっている。

つまり、顔が知られているのだ。

その為、ジュリスは幻覚魔法で俺とシルナの姿を偽装。

お陰で俺もシルナも、この幻覚魔法の効果が消えるまでは、別人に変装している状態になる。

「国境検問所で止められたら困るだろ。小手先の変装みたいなもんだが、この国を出るまでは多分、大丈夫だ」

「…ジュリス君…。…何から何まで、本当にありがとう」

シルナは感激の涙さえ浮かべながら、ジュリスに感謝の言葉を告げた。

本当にな。一生足向けて眠れないよ。

元々、この二人に足を向けて寝ることは有り得ないが。

「感謝してるなら、必ず無事に帰れ。良いな?」

「あぁ。…お前達もな」

「さぁ、行け。早く」

ジュリスとベリクリーデに見送られながら。

俺とシルナは、ロープを掴んで井戸の底から這い上がった。

その先に、祖国が待っていると信じて。